第14話決着!!そしてデジャブ?
私の放った『トーチ』の魔法は、群青のドラゴンの吐いたブリザードを飲み込んだ勢いのまま、その本体までをも飲み込んだ。
その予想外の大きさの魔法に「やっば―いっ! やり過ぎちゃったっ!」と内心ドキドキしたが、そんな事はおくびにも出さない。
そう。
これはメドへの絶好のアピールチャンスなのだから。
「わ、私のメドに手を出すのがいけないんだよっ! わ・た・し・のぉ・メ・ド・を勝手に連れ去ろうとしたのが悪いんだよっ! 何ならもう一発いっとく?」
私の放った、ただの「火」の魔法と、群青のドラゴンのブリザードブレスの激突が起こして発生した水蒸気の靄の中。
そのドラゴンに向かって啖呵を切る、のではなく
腕に抱いたままのメドの耳元の近くでそう叫んだ。
大事なところはきちんと伝えたつもりだ。
「ど、どうメド。わたしメドの為に頑張ったよっ! かなり無理しちゃったよっ! メドわたしってすごい? メドがどうしてもって言うなら、わたし一緒にお風呂入ってあげるよ? メドも疲れたでしょっ!」
よし、今のタイミングなら確実にメドは落ちる。
私がメドだったら、助けてくれた私に惚れてしまう。
そしてあわよくばお風呂もゲットできちゃうはずだ。
「ど、どうかな? メドっ」
「………………しっ、まだアイツ倒れてない」
「えっ?」
『グオォォォォッッッッ――――!! この人間風情がァ! オレが手加減してやればいい気になりやがってっ! 今度は本気でやってやるぞっ!』
群青のドラゴンは、その大きな翼のはばたきで、この辺りに充満していた水蒸気を、一気に散らせ視界をクリアにする。
そして私とメドを見下ろしながら、怒りの声を上げていた。
「うわっ! メドの言う通りだっ! しかも全然平気そうだよっ! なんか話し方も流暢になっちゃったのはよくわからないけどっ!! メドはわたしにしっかり掴まってて! アイツまた攻撃してきそうだもんっ!」
水蒸気を晴らして見えるその青いドラゴンは、大きな翼を左右に広げた。その翼を広げた体長は、優に50メートルを超えていた。
そしてその翼の表面付近に、無数の氷柱を出現させていた。
その現れた数は両翼合わせてざっと4桁は超えるだろう。
そのおびただしい数の氷柱は一斉に
ヒュンッ!
「う、うっそぉっ!!」
「っ!?」
私とメドに向かって空を切り裂き飛んでくる。
ヒュッヒュッヒュッ―――――!!!!
ヒュッヒュッヒュッ―――――!!!!
ヒュッヒュッヒュッ―――――!!!!
『うわっはっはっ! 人間の子供よメスドラゴン共々串刺しになれっ!? あれ? ちょっとまずいメスドラゴンはエンド様から捕獲するように言われてたんだっ!! ちょっと待てくれぇっ――!!』
「ふわ『ふぁいやーうぉーる』!!」
ゴッアッ―――――――ッッ!!!!
数えきれない程の無数の氷柱が届く前に魔法を唱える。
それは私たちと群青のドラゴンの間に、厚い炎の壁を出現させる。
その炎の壁は、優にドラゴンを超えて巨大なものだった。
そして――
ジュッ!
ジュッジュッジュ――――!!!!
ジュッジュッジュ――――!!!!
ジュッジュッジュ――――!!!!
その全ての氷柱を飲み込み、その全部を蒸発させていった。
それにより、また辺り一面は大規模な水蒸気に包まれる。
『な、なんだこの巨大な炎の壁はっ! 魔法が全て防がれただとォ!』
水蒸気の向こう側から青いドラゴンの驚愕の声が聞こえる。
「メ、メド、ちょっと降ろすねっ!」
「ん、わかった。ユーアさま」
私は内股になりながらメドを地面に降ろす。
「……………………」
私の太ももを伝う水分を気取られる前に。
ちょっとびっくりしちゃったから漏らしちゃったって言えない。
『あ、あのドラゴンめぇっ!』
私は初めて憎しみの感情を知った。
幸いメドには気付かれてなかった。
ただ元の年齢を考えるとかなり恥ずかしい。
多分だけど、幼女の姿になった影響で緩くなったんだと思う。
私はそんな恨みを晴らすために『ホバー』を唱えてドラゴンがいるであろう方向に平行に移動していく。
「? フーナさまのローブの中から何か垂れてる?」
それを後ろのメドが発見したことに気付きもせずに。
『こ、今度は何だっ! 何故オレの尻尾が引っ張られるッ!!』
「んんんんんっっっ!!!!」
私は水蒸気に紛れてこっそりと青いドラゴンの真後ろに回り込んだ。
そして巨大な尻尾の根元を力いっぱい掴む。
『はぁっ? 何だッ! お前が引っ張っていたのか!? 何をする気だお前ッ! もしかしてオレの尻尾を引き千切るつもりかッ! 無駄だぞっ! 人間の力でオレの自慢の尻尾を引き千切れるわけないだろッ! 逆にァオレが弾き飛ばしてやるッ! て何だオレの体が逆にッ!!』
「うんんんんんっっっっ!!!!」
ブワッ!!
掴んだ尻尾ごと、ドラゴンが私の頭上に持ち上げられる。
『う、嘘だろッ! オレが人間の子供に持ち上げられるだとォッ!? しかも力比べで負けるなんてッ! お、お前は一体何者だッ! オレをどうする気だッ!! オ、降ろせッ!!』
私の頭上でドラゴンがジタバタ暴れ始める。
それでも私は手を離さない。
それどころか――
「遠くに飛んでいけっ! そして二度と来るなっ!!」
ブワッアッ!!
ドラゴンの巨体を思いっ切りぶん投げた。
しかし私のそんな願いは叶わずに、
「あっ!」
ドゴオォォ――――ンッッ!!
『ガハァッッ!!!!』
遠くに飛ぶどころか、私が張っていた『まじっくどーむ』の壁に大激突して、その巨体がすぐさま止まり、今度は落下の衝撃で土煙を上げる。
「あっ! そうだった忘れてたっ!!」
頭に血が上って、まじっくどーむの存在を忘れていた。
「よ、よし、もう一度だっ! あれっ?」
私は再度ドラゴンを遠投しようと、その土煙が舞う中に姿を入れるが、そこには巨大な青いドラゴンの姿は発見できなかった。
その代わりに――
「うへっ!」
青い短髪の幼女が横たわっていた。
「うへへへへへへへっ!!ジュルっ」
私は手をワキワキしながら、その幼女に近付いた。
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