第8話、最強のスキル

鉄格子に囲まれた俺は、更に赤い壁にも囲まれることになった。


なので、俺にはステラとリンカの会話しか聞こえないのであった。


「って、良く考えたら私ピンチじゃん!!」


ステラはそう言って目の前のリンカの行動を警戒しながらも、後ろにある天上界に繋がる扉を気にする。


ステラは扉へ向かうタイミングを伺っていた。


「あっ、あの‥‥」


ビクッ!!っと心臓が飛び跳ねるくらいに恐怖を感じる。


話しかけられただけで、頭の中はもう真っ白。


「ひーっ、いっ‥‥命だけは‥‥どうか命だけは‥」


ステラは、そう言って床に頭を擦りつけた。


「ちょっ、あの土下座とか止めて下さい。わっ‥私ホントに何もする気ないですよ」


リンカが慌てながらそう口にすると「ブフッ‥‥土下座したんだ‥‥クスクス」などと笑うサクトの笑い声が壁越しに聞こえてきた。


「うるさい、そこ!!」


ステラはそう言って赤い壁を睨みつけた。


「あっ、あの‥‥さっきのこの壁は何だったんですか?あと‥‥その‥‥死んでるんですか私?」


リンカは、手に握っているマシンガンを足元に置き、ステラに話しかける。


「あっ、えっと‥‥さっきのはスキルって言って、まあ簡単に言ったら魔法みたいな感じ。

‥‥で‥‥その‥リンカさんは残念ながら亡くな‥‥」


そこで、ステラの言葉は止まる。


「さっきは土下座してて気づかなかったけど、そのマシンガンから物凄いエネルギーを感じる‥‥もしかして貴方にはオートスキルがあるのかも‥‥」


「オート‥スキル?」


聞き慣れない言葉に、俺とリンカがハモりながらオウム返しする。


「オートスキルってのはスキルの発動を開始しなくても自動的にスキルが発動することよ」


「なんだ。そのまんまか」


「それでね、オートスキルってのは7種類あるんだけど、たぶんリンカさんのはオートスキル最強のスキル、アームズね」


段々と活き活きしだすステラ。


「最強なのか?スゲーな」


「アームズってのは、様々な異世界を5回も救った最強の勇者のオートスキルでね。

半径10メートル以内の中で一番強い人に勝てる武器を手から召喚出来るスキルなの」


「5回も救った勇者と同じスキルなのかよ。めっちゃ強いじゃん」


「リンカさん!!貴方は自分のスキルで自分が苦しむマヌケと違って、勇者になるべき逸材‥‥いや、天才。すぐに勇者になりましょう」


そう言ってガシッとリンカの手を握るステラ。


「おいっ!!今さらっと俺のことディスッただろ」


「あらっ、そんなに厳重な牢獄でも聞こえるのね」


オーホッホとか言って笑いそうなテンションの上がり様である。


「あっ、あの‥‥」


「どうしたのリンカさん?」


「私が勇者とか‥‥無理です。その‥無理です。絶対無理です。無理過ぎます。あとその‥‥意味わかりません」

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