第6話、一ノ瀬梨杏
こうして、女神の部屋で暮らして数時間。(幽閉中)
「暇だ‥‥なんか面白いことないのか?」
俺は寝そべったまま鉄格子越しにステラに話しかけた。
ステラは部屋の一番隅にある勉強机の椅子に座り、書類に目を通している。
‥‥‥‥‥‥‥。
返事はない。
「なぁー、ひーまーだー」
今度はさっきより大声で話しかけてみる。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
うーむ。
無視されるのは面白くないので無視出来ないような一言を言ってやろう。
「おーい」
‥‥‥‥‥‥‥‥。
「ヤベッ、おしっこ漏れそう」
ブチッ。
「あーもう、うるさいの禁止!!」
そう言ってプンスカ怒りながらステラが立ち上がった瞬間、ピンポンパンポンとテンポの良いメロディーが部屋中に鳴り響いた。
「なんだ?」
俺が不思議そうにそう口にすると、ステラはフゥと溜め息をついて「今日は珍しいわね」と言った。
「何が珍しいんだ?」
「このチャイムは、現世で死んだ人間が転生して異世界へ行くときに鳴るのよ」
「なっ、それってつまり‥‥」
「そう。今から転生した人間がここに転生されるわ」
「マジの助?」
「で、今からこの部屋の真ん中にいきなり人が現れて、私は異世界への案内と手続きをするけど、あんたは黙ってること。喋るの禁止!!」
マジの助は無視された‥‥
「転生者は一ノ
綺麗な声をした女性のアナウンスが、今から来る転生した人間の情報を伝えていく。
「リンカねー。
こういう名前の奴はだいたいギャルだな。
そんで、ウザいとキモいとウケるしか喋らねーんだよ」
完全に偏見だけで決めつける半袖短パン引きこもり男。
「そうやって決めつけて、人のこと悪く言うなんてサイテーねサクト。
むしろ私は、すごく素敵な名前だと思うわ。
とても、綺麗な響きじゃない」
そんなやり取りをしていると、更に女性のアナウンスが聴こえてきた。
「死因は、路上で見知らぬ男にいきなり背後からナイフで心臓を刺され、出血多量で死亡」
忘れていた。
転生してここに来るということは、現実で一度亡くなったということ。
それも知らない男に刺され、出血多量で亡くなった‥‥‥
相当痛くて、無念だっただろう。
彼女を殺害した男をぶん殴ってやりたい。
頭の中は怒りと、どーしようもないやるせなさで満たされた。
「なぁ、これから来る奴‥‥笑って迎えてやろうぜ」
「そうね。そうしてあげましょう」
ステラは、そう言って俺が居る鉄格子の前まで来ると、優しく微笑みながら彼女が転送されるのを待っていた。
それを見て俺も笑顔を作ろうとするが、照れてしまって思う様にいかない。
悪戦苦闘しながらも、俺はまだ見ぬ少女の為に不格好な笑顔を作った。
とりあえず鏡がここに無くて良かった。
そして、部屋の中央から突如、眩い閃光が発せられる。
「来るわよ」
ステラがそう言うので転送先である部屋の中央を見ようとするが、俺は眩しくて右手で顔を覆ってしまう。
数秒の後、眩い閃光はすぐに治まり部屋はすぐに元の風景へと戻っていく。
ただ、その中で一つ。
部屋の中央にガスマスクを装着したセーラー服姿の女子高生?が立っていた。
セーラー服姿でなければ、どう見ても戦争のゲームに出てくる兵士だ。
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