第10話 保健室
二限目が終わり、お昼休みになった。
俺はコンビニで買ったカレーパンとたまごのサンドウィッチを食べ、缶コーヒーを一缶飲み干した。
席を立つと保健室に向かった。
保健室はあの渡り廊下を通り、左に曲がったすぐのところにあった。なので、猫の悲鳴が聞こえてもおかしくはないだろう。それを質そうとした。
扉を開け、保健室に入っていく。
入口のすぐ右には洗濯機があった。古い洗濯機らしく、ガタガタと揺れ音もうるさかった。風邪で寝込んでいる生徒には酷だろうにと思った。
先生は奥の机で書き物をしており、俺にちらりと目を向けると、こちらに体を向け、
「どうしたの?」と言った。
「お忙しいところすいません、少し訊きたいことがありまして」
俺はそう言いながら近づいた。
先生の名前は確か、
「訊きたいこと?」と“渋谷”は俺がそばに来ると言った。
「一月ほど前に、猫が殺されたことがありましたよね」
「ああ、あったね。確か、一人の生徒が発見して……」
「そうです。先生はその生徒の悲鳴を聞き、駆けつけましたよね?」
「ええ。俺だけじゃなく、上にある職員室にも聞こえたみたいでね、何人かの先生も駆けつけたわ」
「ではその悲鳴が聞こえたということは、猫の鳴き声は聞こえなかったんですか? 殺される時に、悲鳴を上げてもおかしくないと思うんですが」
「ああ……確かにそうねぇ……。でも聞こえなかったなあ。あの日、そこのベッドで一人寝てたんだけど、その子も気づいてなかったし」
「そうですか」
俺は顎に手をやり考えた。やはり悲鳴は聞こえなかったのだ。ではどうやって──?
「なに、犯人が探し?」
「そんなところです」と俺は答えた。
「どうして今更?」
「とある教師の怠慢のせいですよ」
「えっ?」
「では、これで失礼します。ありがとうございました」
俺は背を向け歩き出した。扉を開けると、外に出た。
廊下を歩きながら、俺は考えていた。
保健室にあるシーツなどを使い猫を覆い被せれば、鳴き声はたちまち消えてしまうのではないだろうか。返り血を浴びてしまっても、洗濯機で洗うこともできる。
しかし、同時に問題もある。渡り廊下に猫がいるのを発見し、わざわざシーツを取りに行き殺したのかということである。それはどうも納得にかける。
確かな動機が解れば、犯人像も絞れるのだろうが。
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