第41話 解放①
「有明のドラゴンは緑色なんだね」
言った後に、しまったと思った。歩きながらつい雑談のつもりで喋っちゃったけど、海野くんにドラゴンの話はタブーだった。
「そうなんだよ。綺麗なエメラルドグリーンだろ?神奈川県藤沢市の湘南竜とか、広島の瀬戸内海竜と似てるけど、緑が薄いのが特徴なんだよな。あと頭に角が無いかわりに手足の指に水かきがあって、やっぱり海のドラゴンって感じがあっていいね。でも基本は海の中じゃなくて陸地にいるだろ。海でも浅瀬にいるくらいなんだ。そこはやっぱり海って言っても湾内の埋め立て地に住んでるから特徴がでるよな。江戸川区にいたっていう葛西水龍も水の中のドラゴンだけど、親竜が海にいるってだけで実は江戸川区の普通のドラゴンは川に多かったみたいだぜ。だから海龍じゃなくて水龍なのかもな。江戸川区も海の街っていうよりは川の多い街だもんな」
・・・話が長い!これだから海野くんにドラゴンの話題はしたくなかったのよ。話を聞き流してる間に江東区の親龍がいるっていう有明の広場に着いちゃった。
新宿御苑の時と同じで、親龍に近くなるとだんだん小型のドラゴンの数が増えてくる。土佐犬くらいの大きさのドラゴンがあちこちを歩いてて、その中心を見ると、大きな緑色のドラゴンが地面に横たわって寝てる。大きい。でも、新宿の黒神龍は大きなビルくらいの大きさだったけど、こっちの親龍はひとまわり小さい。黒神龍は日本一大きいって言ってたから、そりゃそうか。
「やっぱいないかあ」
海野くんはこのドラゴンも見慣れてるのかな。すぐに竜一くんを探し始めてるみたい。わたしもあたりを見渡してみるけど、それらしい人はいない。そういえば、そもそも人があんまりいない。新宿御苑と違ってあんまり観光地にはなってないのね。
「お、なんだ?」
広場の奥、有明竜の裏側から着物を着た人たちが数人歩いてきた。もしかして、予想が当たっちゃったかな。きっと有明竜に祈祷をあげにきた竜司の人たちだ。この中にもしかして竜一くんがいるんじゃない?
「まった」
近づこうとする私を海野くんが制止する。
「どうしたの?」
「邪魔しちゃいけないよ。終わるまでここで待っていよう」
確かにその通りね。向こうはお仕事で来ているし、大事なお祈りなんだから邪魔しちゃいけない。終わるまではここで待ちましょう。ここからでも顔が見えないかな。ちょっと距離があるから、よく見えない。男の人が4人かな。竜一くんくらいの身長の男の子っぽい人もいるけど、どうかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます