第17話(番外編) 西葛西インドカレー①
「どうも、はじめまして。君が平川さんだね。一條から話は聞いているよ」
「はじめまして。えっと・・・」
「隣のクラスの大川空。同じクラスになったことはないから知らないよね」
なぜこんなことになっているのか。
空が急に西葛西のインドカレーを食べに行きたいと言うから来てみたら、駅前を歩いている知恵とばったり会った。
仲のいい吉田美穂や二宮明里と一緒にいるわけでもない。
「今日はひとり?吉田さんと二宮さんは一緒じゃないの?」
とりあえず疑問をそのまま聞いて見る。
「さっきまで一緒だったんだけどね。ミホは彼氏とデートで、アカリはバイトがあるって言って帰っちゃった。ひとりでどうしようか迷ってたんだ。西葛西はスタバもないからどこに入ったらいいかも困っちゃうね」
その感覚はまったくわからない。
スタバなんて最後に入ったのがいつか記憶もない。っていうかなんでスタバじゃないとダメなんだ?すぐそこにドトールがあるじゃないか。西葛西にスタバがないっていうのも、言われてみれば確かにと思ったが言われるまでは気がつかなかった。
「西葛西はよく来るの?あんまり遊びに来る場所のイメージでもないけど」
「あんまり来ないけど、学校から近いからね〜。ほんとは船橋とかララポまで出たいけど、遠いから。南砂の方が行くこと多いけど、葛西よりはこっちかな」
江戸川区には若者が遊んだり買い物をするような場所はほとんどない。買い物をするにしても都心の繁華街に出るよりは千葉に行った方が近い場合もある。千葉県船橋市の南船橋駅には巨大ショッピングモールの「ららぽーと」や大規模家具屋の「IKEA」があり、若者というよりはファミリーに人気の街だ。しかし、他に若者が行く場所があるかと言われればそんなにないので結局若者も南船橋に行くのだ。あとは西葛西の隣には江東区の南砂町という駅がある。快速も止まらずいまいち知名度が低い駅だが、ショッピングモールが複数あり、夏には花火大会も行われるので江東区民はたまに行く場所でもある。
余談だが、南砂町から少し歩くと「砂町銀座」という商店街がある。砂町銀座は十条銀座、戸越銀座とあわせて東京の「三大銀座」と言われる商店街だ。中身は昔ながらの商店街だが、なぜか多くの人が訪れる人気スポットになっている。
「竜一くんたちは何してるの?」
「ああ、こいつがインドカレー食べたいっていうから来たんだ」
「インドカレー!?いいね!でもなんでインドカレーで西葛西なの?」
スタバのある場所は詳しいのに、西葛西のインドカレーは知らないのか。西葛西といえばインドカレーと言う人もいるくらい、西葛西にはインドカレーの店がたくさんある。しかもかなりおいしい。
「へー、西葛西ってインドカレーが有名なんだ。知らなかった」
確かにあまり女子が行く場所ではない。男子高校生が行く場所かと言われればそれも違う気がするが・・。空はカレーが好きなのでたまに来ることがあるのだ。
「それにしても、竜一くん。他のクラスに友達いたんだね」
知恵の言葉がぐさっと胸に刺さる。まさか知恵にまで友達いないと思われていたとは。確かに今のクラスにもそれほど仲のいい友達はいないさ。でもそれなりに溶け込んでいたと思っていた。やはり友達少なそうに見えるのだろうか。
「そ、そりゃいるよ。いくらでも」
「へー。いくらでも、ね」
空がにやっとする。あとで殴っておこう。
「平川さん、今のクラスでこいつは楽しくやってる?ちゃんと友達いるかな」
はあ?なんだ、こいつ。いや、でもちゃんと聞かれると、誰を友達と言っていいだろうか。クラスの男子とはみんなそれなりに話をするが、友達ってはっきり言えるのは誰だろう。
「大丈夫、それは安心して!」
なぜか知恵が自身たっぷりに答える。いやいや、大丈夫か?そんな安心できるほど友達いるかな。俺。
「私がいるから!」
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