黒猫、暗黒を振り返り省みる


 マルーニャデンの魔法ギルド前。

[転移]で現れた先で、私は魔王の腕をつかんだ。


「待ってって言ったのニャ!! っていうか、魔王! キミがあの魔法陣に大量魔力を入れた犯人だったニャ?!」


 魔王はアクアマリンの目をパチパチとした。


「あっ、いきなり連れて来ちゃったのはごめん。でも魔量は、いっぱいあるからたくさんあげるって、最初に言ったよー」


 そういえば言ってた。

 いや、でも、そんなに大量だって思わないよ!!

 だって、魔量4000もあれば大魔法使いで、私、それの十倍あるんだよ?!

 それをさらに上回るってどうなってんの?!


「だって、おかしいくらいある!!」


「魔王だからかなぁ?」


 首をかしげる魔王。

 納得いかぬ! 口を尖らせてると、魔王がほっぺを押した。


「そんな顔してもかわいいだけだよ、黒猫。ほら魚買いに行こうー。飴屋の屋台も出てるかもよ? 飴、買う?」


「買う!」


 飴屋さんの屋台は、キレイな飴がいっぱいつまっててかわいいの!

 スコップみたいなのでザラザラーってビンに入れてくれるんだ。

 町のみんなの分も買ってってあげよう!




 買い物をしてまた魔法ギルドへ戻った。

 魔法書写室へ行くと、三人は真剣に魔法札を書いているところだった。

 受付まで戻ってトレッサ師匠のところへ行く。


「師匠ー!これ、おみやげ!」


「おや飴かい」


「うん、ちびっ子たちと師匠の分」


「あたしの分もあるのかい。遠慮なくいただこうかね。あの子たちもよろこぶだろうよ」


 師匠は一つ取り出して、口の中に放り込んだ。


「ああ、うまいねぇ。『魔書師に飴玉』って昔から言われてるくらいだからねぇ。ありがとうよ」


 猫に小判――じゃないよね。鬼に金棒かな。


「魔書師に飴玉?」


「ああ、頭を使うと甘いものが欲しくなるだろう? 頭を使う職の代表が魔書師さね。だから必要なところへ必要なものをって意味だね。ぴったりの贈り物って意味もあるよ」


 適材適所的な? ま、なんでも喜んでもらえるならいいや。


「ところでミュナ。年明けくらいから、ヴェルペをそっちに住ませてもらえないかい?」


「いいですよ。お姉ちゃんたちは?」


「あの子たちは学園に行かせるつもりでいるんだよ。ちょうど入学の年になるからね」


 マルーニャ辺境伯領立グノム学園という全寮制の学校へ二人を入れるつもりだと、師匠は言った。


 町の各所に自宅から通える学校もあるけれど、受けられる授業の質が違うと。領立学園でかかるのは寮費と食費だけで、孤児と特待生はそれも無料になるらしい。

 生徒はほぼ平民なんだって。貴族の子は王立学院に行ってしまうことが多いとかなんとか。


 はっ! その王立学院では、夜な夜なダンスパーティーで婚約破棄をしたりされたりで、ざまぁ劇場が繰り広げられているんですね! 行ってみたかった!!


 ちなみに領立学園があるのは辺境伯領と、教育に力を入れているいくつかの領だけなんだそうだ。そして王都には国王の私財で運営されている王立オレオール学院と、王領立ルクス学園の二つがあるんだって。


「町の学校は三年だけどね、学園では五年学ぶんだよ。もっと学びたければ卒業後に研究院へ進学もできるしね。学園の方がいろんな体験ができる。だからやりたいことも見つかりやすいだろうし、この先の選択肢が広がりやすいだろうね」


「師匠も学園に行ってたの?」


「そうだよ。ここのじゃないがね。もっと北にあるモディアル辺境伯領の学園に行ってたんだよ。小さな男爵領の平民の家で生まれ育ったんだがね、領には領立学園なんてなかったからねぇ、魔法の勉強がしたくて必死に勉強して入ったもんさ」


 大変そうな話なのに、師匠は楽しそうにそう語った。

 もしかして、平民から魔書師主任になったのってすごいことなんじゃないかな。ジョージさんとか貴族っぽいもんね。ウィンクとかしてたし!

 師匠はやっぱりすごい人だった。

 私、ちょっとだけ反省した! 授業なんて当てられないようにすることしか考えてなかった!


「ミュナも、もしもっと魔法陣や古代精霊語の勉強がしたいなら、あたしが研究院へ推薦状出してやるけど…………あんたのそのおかしな能力が隠せるならだねぇ……」


 ああ、もったいない……と半目で見てくる師匠。

 隠していてもにじみ出てしまう己の能力がニクイ…………フッ……。


「…………とりあえずはだいじょぶです! 自主学習します! はい!」


「まぁとにかく、ミュナのとこでヴェルペを預かってくれるなら安心だよ。いきなり一人になったらさみしいだろうからね。書写も教えられるだろうしね?」


「はい! がんばります! 書写室も作ってるし、準備整えておきます!」


 私は元気よく手を挙げた。





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