イギリスはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドという歴史的経緯に基づく4つのカントリー（「国」）が、同君連合型の単一主権国家を形成している。

1829年に首都警察としてロンドン警視庁（MPS）が設置され、地方部では1835年に成立した都市団体法に基づいて警察機構整備が着手され、1856年県及び市警察法によってイングランドとウェールズの全域に自治警察が設置されることになった。しかしこれによって誕生した200以上の独立した自治体警察のあいだでは、人事管理や業務効率には実質的にかなりの格差が生じていた。状況是正のため、政府は小警察機関の統廃合を目指したものの、地域住民からの反発が根強かったために状況是正が中々進まず、第二次世界大戦中の1942年と戦後の1946年にようやく大規模統廃合がなされた。その後も、1966年の全国的警察統合計画、1974年の地方自治体再編成に伴う再編成が行われ、イングランド及びウェールズの警察は43組織に減少した。またスコットランドでは、同様の再編成が行われたのち、2012年警察・消防再編法に基づき2013年4月よりスコットランド警察として一本化された。

イギリスでは古来より地域の秩序・平和を維持する責任は地域住民各々が負うべきであるという自治の意識が強く、組織的な警察機構には反発が強かった。このため現代に至っても中央統制をできるだけなくし、地方分権の理念に則った自治警察が原則となっている。現在は社会情勢の変化に伴ってこれらの伝統理念を尊重しつつも警察活動の統一化・規模の拡大が志向されている。

内務省が警察業務を担い、これは警察制度の企画立案のほか、国の公安に関する事案についての警察運営、警察活動の基盤である各種警察技術、警察行政に関する調整等を行う。

従来イギリスには国が直轄する犯罪捜査機関はなかったが、重大犯罪の捜査については各地方警察の本部長が警視庁に応援を求めることができた。その後、犯罪の広域化・スピード化に対抗する必要から1992年には組織犯罪対策部局として中央犯罪情報局 (NCIS) が、また1998年には既存の管区犯罪捜査隊を統合改編するかたちで中央犯罪捜査隊 (NCS) が設置された。

2005年、これらを中核として、他の部局の関連部署を統合するかたちで、重大組織犯罪局（SOCA）が設置された。これは政府の直属機関ではない独立組織である政府外公共機関であった。さらに2013年には非内閣構成省庁として国家犯罪対策庁 (NCA) に増強改編された。これらの機関は、アメリカ合衆国の連邦捜査局になぞらえて、「英国版FBI」と称されることもある。

ロンドン警視庁はシティ・オブ・ロンドンを除くグレーター・ロンドン一円を管轄する。警視庁は首都であり国際都市であるロンドンを担当する地方警察であるとともに、国の公安に関わる事案や王室の関係者・施設の警備、外国政府関係者・関係施設の警備など特殊な業務を負っている。初代本部の所在地から「スコットランドヤード」とも呼ばれる。

警視庁が管轄しないシティ・オブ・ロンドンにはイギリスの商業・経済・金融の中枢機関が集中していて経済犯罪が問題となる。また夜間人口に比べて昼間人口が極端に多いことから交通渋滞や各種事件事故が多発する。こういった特殊性・歴史的な独立性を考慮してシティのみを管轄するロンドン市警察が設置されている。

イギリスでは地方自治体単位で組織されている地方警察が一般警察活動にあたっている。2012年度までは、イングランドおよびウェールズには43個（上記のロンドン警視庁および市警察を含む）、スコットランドには8個、そして北アイルランドに1個の地方警察が設置されていたが、2013年度よりスコットランドの警察組織は一本化された。

警察官の階級は日本の警察と類似していて（日本側がまねをした）警視総監をトップに据えている。階級として警視監,警視長,警視,警部,巡査部長,巡査などがある。

警視庁内に特別部と呼ばれる総合的な公安警察を持っている。警察機関以外に内務省直轄の保安局（MI5）はイギリス本土、外務省の秘密情報部（MI6）は国外において、テロ活動関係を含めた情報収集を行っている。