そして、私はいなくなった
彼岸キョウカ
そして、私はいなくなった
ひどく頭が混乱していた。
それは慢性的な混乱だった。
自室のドアを開けると、目の前には椅子と先が輪っかになったロープが__首を吊るためのロープが中央にあった。舞台みたいに、そこだけが妙に明るく。舞台の奥には君が見えた。
あぁ、この舞台は君が用意したのか。君が、用意してくれたのか。
あんなにひどかった混乱は嘘のように消え__消えたことに気づかないくらいに__私はふらふらと舞台の上に進みでる。
君がこの舞台を用意してくれたことがたまらなく嬉しかった。幸せだった。自分で用意したことも忘れるくらいに。
今までこれっぽっちも思い出せなかった、久しぶりに見る君の顔。好きだったその顔。もう私の日常から消えたその存在。私の心の中でしか生きられないそんな君。
なんでそうなってしまったのだろう。__あぁ、私が逃げたんだ。君を想いすぎるあまりに苦しくて苦しくて逃げてしまったのだった。あぁ。あぁ。
僕はいつのまにか、君を愛してしまっていたのかもしれない。
輪っかに首を通す。君がふっと笑う。私も笑い返す。
君が、滲みはじめていた。
君が消えてしまう前に、さぁ。
私は椅子を蹴った
そして、私はいなくなった 彼岸キョウカ @higankyouka
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