第2話人間性をヤスリきった男



朝のラッシュというものはキツイもので、何がキツイと問われれば人混みと体臭だ。

毎日繰り返す日常。

バスから降りて少し離れた駅へ歩くサラリーマンの列。

その横を妙な小走りで通り抜けるおばさん。

駅の改札前のロータリーでは今日も日常よろしくよくわからない団体がよくわからない自由を求めて署名活動に取り組んでいる。

目の前でハンカチを落とした女性がいてそれを皆見て見ぬ振りをして通り過ぎて行く。無論自分も誇り高き日本人として協調性を出さねばとハンカチを拾わずに無視をした。

吸い込まれるように人が改札に流れ込んで行く。チャージ忘れをして残高を突かせた学生に後ろで煽り運転ごとくぴったり張り付いていたおっさんがぶつかり喧嘩を始める。これが東京の日常だ。

そんな腐った日常の横を通り抜け改札を抜けた俺は軽い優越感に浸りながら階段を下った。

定期券マジ神。

気を抜いていたのが悪かったのか、体質というべきか、いやはたまた呪われているのか、今日とて今日も事件に巻き込まれた。

階段を降り切って上に吊るされた電光掲示板を見ようとした俺の横を背丈の高い大男が通り過ぎた。その瞬間右手に強烈な痛みを感じた俺は、手を目の前に持ってくると皮がむけて血が滲んでいた。

薄皮がではなく、少しえぐれたように亡くなったそれはみるみる血が満ち流れ出した。

言葉にならない痛み。痺れるような激痛、それ以上に普段の楽観的で人に無関心な俺の頭はそいつへの怒りに染まっていた。

流れ出す血を舌でなめとり、古くなった絆創膏を押し当てて走る。

10秒もしないうちに出てしまう電車で逃げようとしたそいつを俺は追いかけた。

だが乗る直前で後ろから駅員に引っ張られ結局追いかけることは叶わなかった。

なんてことをしてくれたんだと怒りの矛先が駅員に向かいかけたが、血が収まり始めるとともに賢者モードに達したかのように冷静感を取り戻した俺はなにもかもどうでもよくなって、この事実をここに書き残すことにした。

すれ違っただけで皮膚がなくなるようなザラついたものといえばヤスリだろう。

紙やすりではなくもしかすると金属ヤスリだったかもしれない。


俺はその男をエリートオブマッド予備軍、ヤスリ使いと名付けて警戒することにした。




エリートオブマッド予備軍

【ヤスリ使い】

性別……男

身長……180〜190cmくらい

見た目……かなり太っている。顔は見えなかった。肌荒れしていて首はたるんでいた。

髪……短髪だが丸刈りとかでは無い。

身なり……黒のスーツに肩掛けカバン。寄れたシャツ。

体重……見た目的に体重は100kgをゆうに超えていると推測。

人種……アジア系。黒っぽい髪に黄色い肌。

歩き方 ノシノシ歩き。たが歩くのが早かった。

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狂人観察レポート・2005〜エリートオブマッドを追え! ぺよーて @GRiruMguru

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