第2話
トオル それが俺の名前だ。この世界では珍しい変わった名前だ。
そもそも俺はこの世界の人間ではない。5才の時にこの世界にきた迷い人だ。
友達と遊んでいて気づいたら俺だけここにいた。そして森で運良く今の両親に拾われた。彼らには子供がいなかった。それでそのまま育てられたって訳だ。
しかし、その両親も俺が15才になってすぐ事故でなくなった。
黒髪、黒眼の青年ユリアンと初めて会ったのは俺が15才の時、両親を亡くし一人になった初めてのある夏の日だった。
その日は朝から蒸し暑かった。しかし街は大勢の人で賑わっていた。
今日は一年に一度のお祭りである。ここターンベルの街は王都からも近く主要な街道でもあった。この日ばかりは近隣の街からも大勢の人が訪れてくるのだ。
街のあちらこちらで出店が立ち並び人が溢れている。
俺はホールボアの串肉を頬張りながら人混みの間を抜けてある屋敷の前に立った。
扉を叩くと中から老齢の執事が出てきて用件を伝えると中に通された。
廊下には何枚もの絵画が掛けてある。どれも少年を描いたものだ。
その絵の中の少年はどれも裸だった。
執事は廊下の先の扉の前で止まり中に声をかけた。
部屋の中から返事はない。
しかし執事は躊躇うことなく扉を開き中に入る。
部屋にはひとりの青年と裸の少年がいた。青年は此方を見ることもなく不機嫌そうにキャンパスに向かっていた。
「旦那様ご注文の品が届きました」
執事がそう言うと初めて青年は此方を向いた。
そして、俺を視界に入れると嬉しそうに眼を眇め唇が弧を描いた。
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