第17話るるかとドローン

「あ、あのドローン危なくない? 墜落しそう」

「素人に扱わせるチューンじゃないわね、あれ。カメラとセンサー類がごてごて載ってて、その重量に合わせて動力もだいぶ改造してあるんじゃないの。あんなピーキーなドローン、絶対問題を起こすって」

 私とヨヨは、屋台の焼きそばを食べながら、校庭で無邪気にドローン体験会を遊ぶ小学生たちの姿を眺めていた。

 人知部展示の会場担当は時間ごとに決まっていて、今会場には清宗先輩と巡さんの二人が鑑賞者を案内しているはずだ。

「……今日はとことんやけ食いにつきあってもらうわよ、るるか」

 剣呑な目つきでヨヨが言う。屋台は校舎まわりをぐるっと囲むように並んでいてけっこうな数が出展している。そのすべてを制覇する気だったら、どこかで機を狙って止めてあげよう。せっかくのヨヨのすらりとした身体が失恋太りに陥ってしまうのは残念だ。

「まだ次の会場当番まで時間あるし、焼きそば食べたらすぐ次の屋台に行くよるるか」

「あ、ヨヨ。あのドローン落ちる」

「あー。本当だ。うわ、ガキにしてもへたくそすぎるでしょあの操縦。さっさと近くの奴がフォローしろっての」

「あ、男子がコントローラーを受け取ったよ。なんか焦ってるね。あ、あの男子、同じクラスだったような。ヨヨ、あの男子わかる?」

「ごめん、私るるか以外のクラスメイトの顔は一人も覚えてないや」

「ヨヨもたいがい友達いないよねー」

 そんな会話をしている間も、ドローンはあぶなかっしい挙動でふらふら飛び回っている。が、落ちそうで落ちない。というより、どうも校舎に向かっているような気がする。

「あれ、なんかおかしくない?」

 私が異変に気付いた段階で、ヨヨも真剣な表情になっていた。

「なに、あれ? 明らかに、コントローラーの制御を受け付けてない……? 別の誰かに操作されている……?」

「ヨヨ!」私はあることに気づいて叫んだ。「あのドローン、人知部の部室に向かってる!」

 その言葉の直後に、制御不能となったドローンが、校舎の窓に衝突してガラスをつきやぶり教室内に飛び込んだ。

「やっぱり、人知部の部室だよ、あそこ!」

 私たちは遅まきながら、何か問題が発生している可能性にいきあたり、食べかけの焼きそばをその場に残して、部室へ向かって駆けだした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る