第13話・バーディスの目的
学校生活にエルヴィスが慣れた頃、二人でガセボを借りての密談。エルヴィスはバーディス嬢に舞踏会を誘われた。バーディス嬢のレッドライト家が仕切る。舞踏会であり、バーディス嬢のご親友という事で誘われたのだが。
「……踊りには自信がないがそれでもいいのか?」
「ただ、リズムに乗って動くだけよ」
「あまり、練習出来てないが、わかった。下手なりで努力しよう。服装はやはり……大事か?」
「大事、あなたもしかして制服しかないのかしら?」
「いや、ある。服はな……残業で作ってくれたらある」
「作った?」
「ああ、オーダーメイドだ。素晴らしいと思うぞ」
「……話を聞けば元男でしょ。そんなあなたにそんな服が用意出来ると思わなかったのに。自作なんてまでして……」
「いいや。ほとんどは服屋の想像実現力です。素晴らしい者が出来たのでね。ヒナトにも文句は言わせない」
エルヴィスは苦渋の決断の末に決めた事を握り拳を作って震えて表現する。
「まぁいいわ。不安だから明日、持ってきて部屋で着替えなさい」
「わかった。あと聞こう……舞踏会に剣は許されるか?」
「残念ね。エルヴィス……却下」
「だろうなぁ。わかった。明日だな……あまり期待しないでくれ」
「ええ、わかった。期待しないわよ。それよりもさぁ……聞いてエルヴィス。ヒナト君って男に興味あるの?」
「ぶふっ……どうしてそれを?」
「令嬢に一切、心を開かない王子様。エルヴィス、あなたには開いてるでしょうけど。どの令嬢にも上部の優しさしかないみたいに見えるとね噂よ。八方美人と言う」
「平等に優しくはいいじゃないのか?」
「そんなの。本当に好きなら我慢できない。私が一番と思われたいのよ。あの子らは」
「まぁ、そうか。仕方ない部分でもあるな。ヒナトは魅力的な騎士見習いだ。バーディス嬢も気になるのだろう?」
「気になるわ。男の誰が好きなのかを……セシル君かハルトか……どっちなのかとね」
エルヴィスはこの時、電撃が走ったように背筋が冷える。ヒナトに限ってそれはと思ったが。
好きだと言われているエルヴィス自身の事もあり否定はしかねた。
「ふふ、その反応。心当たりがあるのね!!」
「……ええ、ヒナトは少し変わった感じだから。無いと否定はできない」
「ああ、そうなんだ!! おかしいおかしいと思ってたのよね。3人は誰も令嬢を一人と選ぼうとしない。遊びで令嬢と仲良くするが一番はいないハルト。優しくするが誰も興味がないようなヒナト君。同じくセシル君。絶対、変だと思ったの。ヒナト君も姉とは仮面を外すようですけど。それ以外は彼らしか外さないの!!」
身を乗り出してエルヴィスに語りかけるバーディスにエルヴィスが手を出して落ち着こうとジェスチャーをする。
「……ハルト君は女の子好きだと思う。セシル君も」
「妄想には関係ないわ!!」
「……」
エルヴィスは困惑する。妄想と言う二文字に。
「親友と言ってくれたあなたにだけ言うわ。私、実は……同性愛の小説が好きなの。それも甘い物よ!! 性別を越えての愛は美しいわ。過去の文化であり、廃れたけれど!! 戦場で信じれるのは隣の子だったというではないですか!!」
「……」
エルヴィスは冷や汗を書き続ける。予想より激しい暴露に。恍惚とした表情をするバーディスは笑いだす。
「本当にありがとう。3人を間近で見れる距離まで近付けてくれて」
「……俺はてっきり。誰かを射止めるかと……」
「3人の仲を咲いてどうするの? そんなのわざわざしないわよ。自然に成り行きを楽しみ小説のネタにするわ」
「……」
エルヴィスはもう何も言わなくなる。圧の押されて何も浮かんでこないのだ。いや、一つ浮かぶ。
「……えっと、12歳の少年は素晴らしい?」
「大将軍の言葉ね。12歳の花の盛りの少年は素晴らしい。13歳の少年はもっと素敵だ。14歳の少年はなお甘美な愛の花だ。15歳になったばかりの少年は一層素晴らしい。16歳だと、神の相手が相応しい。17歳の少年となると、おれの相手じゃなく、アンジュ神の相手だとね。流石ね!!」
エルヴィスは後悔をする。曖昧に覚えている言葉をポロっと言ってしまった事を。全部一字一句間違えずに吟うバーディスを見ながら震える。
「その表情……ごめんなさい。ちょっと熱くなりすぎました。ごめんなさい」
「いいえ。趣味は人ぞれぞれ……そ、そうですか」
「耐性ないのにごめんなさい。ふふ、ああスッキリしたわ。隠すの大変だったのよ。今度からはしっかりと隠さないわ」
「……俺だけの前で語ってください。引かれます」
「知ってるわ。だから、ありがとう。あとこれオススメだから読んでね」
「……は、はい」
エルヴィスは一つ、業を背負う気持ちを抱き。明日の準備を考えて今の話を忘れる事にし、バーディス嬢は綺麗で高潔な名家の令嬢と思っていたエルヴィスは考えを改めたのだった。
*
家に帰って来たエルヴィスはヒナトに真面目に話しかける。
「ヒナト……話がある。大切な話だ」
「はい、兄上」
「バーディス嬢は気をつけろ……俺ではわからない物が見えている」
「……」
「それが今日……わかった。秘密であるが気を付けろ」
「あの、兄上をあそこまで怖がらせるとは。バーディス嬢はそこまで……」
「ああ、わからない世界だった」
(兄上といったい何が?)
その日、ヒナトもバーディス嬢の得体の知れない怖さを感じとるのだったが。なお、杞憂に終わることとなる。
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