第12話・赤い髪の二人
「はぁ……やっとこの部屋にこれましたわぁ」
「「「……」」」
「はい、クローディア。薔薇の紅茶です」
「ありがとう。エルヴィス」
放課後、訓練で満身創痍で部屋に帰って来た3人は目の前の赤い髪のクローディアと言う名の女性が待ち受けており。3人は状況確認のために魔法の力で意志疎通ができるアイコンタクトをする。
(誰だよ。レッドライトよんだやつは!!)
(……僕じゃない)
(兄上です……クラスで色々あったみたいです。同じクラスなんです……)
(くぅっ)
エルヴィスはそのまま無言の3人が座るだろう席に氷の入ったコップを置き紅茶を注ぐ。
「訓練、お疲れ様。ヒナト、立派に汗を洗い流してますね。そうです、それが大切です」
「はい。よく言われてましたので……清潔感は大切です」
「そ、そうだな。でっ……なんでこいつが?」
「あらぁ~こいつ呼ばわりですかぁ? 遠い親族のグリーンライトの赤髪さん」
「……黙れ。紅茶やろう」
「あらぁ。腐った緑茶さん……髪が赤いわよ」
ピリッとした睨み合い。その空気の中で……ヒナトは兄上に近付き。尻を触る。
「ひっ!? ヒナト!!」
パンッ!!
「勝手に何する!!」
ヒナトの頬に一発いい音が鳴り響く。驚いたバーディスとハルトは視線を外しその事件を見る。
「ただ、触れただけじゃないですか?」
「……尻を掴んでおいてか? 鷲掴みだったぞ?」
「なぜ、怒るんです? 昔は普通に触っても怒りませんでしたよ? ハルト!! さっき君のも触りましたよね?」
「触ったな。筋肉見せ合いでな……」
「あっ……いや」
エルヴィスは何かヤバいと感じ口がどもる。
「兄上……男同士なら。相手の体を褒め合うのは普通ですよ? ということは……女として自覚しているのですか?」
悪い笑みを向けるヒナトにエルヴィスは少し焦ったが……その問いに対する批判は無理だと考えてから口にする。
「……では、それを肯定したら……お前は他の女性にもするのか? ヒナト……俺はそういうの良くないと思う」
「……少し品位に欠ける行いでした。ごめんなさい」
ヒナトがしゅんと落ち込む。ちょっと羽目を外し過ぎたかと。そして、エルヴィスは手を叩きそして……
「これでこの話は終わりだ。すまないが触られるのに嫌悪感がある。以上」
「わかりました、兄上。でっ……バーディス嬢について紹介されてませんよ?」
「そうだな。俺のクラスの友達バーディス嬢です。ボッチになりそうなのでかまってあげてください」
「ボッチ!? エルヴィス!! 聞き捨てならないわ!!」
バーディスがハルトとの睨み合いなんということ忘れエルヴィスに詰め寄る。エルヴィスは笑みを浮かべて答えた。
「クラスで見てましたが、名家を盾にし、高圧的でちょっと怖さを武器に人と付き合う節が目立つ。誰もいないここで言うが……それでは誰も振り向いてくれない」
「そんなことないわ!! クラスでの輪を知ってる? 私が中心でしょ?」
「もちろん、だが……今あなたに問います。クラスでナイフが突き刺された場合に心配する人居ますと心の底から言えますか? 今の所は俺以外いないと考える」
「俺以外? エルヴィスはもし刺されたら助けてくれるの?」
「刺される前に庇う」
ヒナトに少し視線を流して答える。
「それが令嬢を御守りする騎士でしょう? だから心配する。尖ったバーディスさんに」
「……」
バーディスが耳が真っ赤になりながら、椅子に座る。そして……エルヴィスに伝える。
「……わかったわよ」
「ありがとう……」
そんなバーディスにエルヴィスはちょっと照れくさそうに笑い隣に座る。それにセシルが声をかける。
「……落ち着いた所すいませんが。本を読んでもいいですか?」
「勝手にしなさい」
「バーディスさん、そこは……はいと言う二文字でいいと思います。どうぞ、セシルさん。紅茶のおかわりどうですか?」
「……はい、今度は暖かいのをお願いします」
「はぁ、じゃ俺も頼むわ」
「兄上、私のも」
「……エルヴィス。私も、新しいのを頂戴」
「わかりました」
あの切り詰めた雰囲気が砕け、落ち着いた空間でただ放課後を同じ空間で5人は過ごすのだった。
*
エルヴィスとヒナトは二人で家に帰る。その途中……
「ありがとう。ヒナト」
エルヴィスがヒナトに唐突にお礼を言う。
「何ですか? 兄上」
「わざとだろう。尻を触ったのは」
「……あの空気を変えたくありませんでしたか?」
「もっと他に手を考えて欲しかった。つい手が出てしまったじゃないか」
「そうですね。いい一発でした」
「……結構、ピリッと電気が走ったみたいになって驚いた」
「そうですか。言うこと聞きました」
「酷い話だな。尻だけでああも……取り乱す」
「柔らかかったです兄上」
「二度目は取り乱さないぞ……すごく気味が悪い」
「ははは、可愛かったのに残念ですね。まぁ……それにしても。あの二人は何かあるので気をつけてください。兄上」
「わかってる。髪色でああもなるのだからな……俺と同じようにコンプレックスあるのだろうな」
「コンプレックスですか?」
「ああ、こんな母上と同じ、ピンク色……あまり好きではない。男らしい色がよかった」
「そうですか、私はその桜色は本当にいとおしく思います。万年咲く、綺麗な花のようで」
「お世辞をありがとう」
「……はぁ、カッコいいですよ」
「ありがとう!!」
「……」(くっ、私が取り乱す)
エルヴィスとヒナトは会話をしながら帰り、途中ヒナトが黙る。そのヒナトがエルヴィスの手を優しく掴み。エルヴィスはため息を吐きながら仕方なく黙って握り返して黙って帰るのだった。
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