第14話・兄上のよそ行きの服
「すいません。ここで着替えさしてくれ」
放課後、3人の優秀な生徒に待っていたのはエルヴィスの奇抜な行動だった。バーディスは大きな大きな車輪のついた箱を引っ張り部屋に入れる。
「兄上、早朝……何か取りに行くと言ってましたがそれですか?」
「ああ、この前に思い付いた物だ。部屋借りてもいいか? 一応……この体は見せるの恥ずかしい」
「どうぞ兄上。更衣室はそこです」
「……エルヴィスさん。鍵はそこの引き出しにございます」
「ありがとう、セシル君。ヒナトは覗くなよ」
部屋の別室にエルヴィスは荷物と一緒に入る。ヒナトは鍵がかかった事を確認して扉を背にする。もちろんハルトはそのヒナトの前に立ち、ニヤニヤと笑いを見せつけた。
「おい、どけろよ。ヒナト」
「何でですか? ハルト」
「わかるだろ?」
「……覗きは如何な物かと」
「お前だって見たいだろ?」
「お家でこっそり見てます」
ドンドンドン!!
扉を叩く音が聞こえ、それがエルヴィスの抗議なのを3人は理解。
「おい、俺にも見せろ」
「男の体に興味はないのでしょう?」
「俺がそれを確かめてやるよ」
「結構です。なぜ、そんなに興味を?」
「……露が弾く白い薔薇のように美しい肌。羽毛の枕のように柔らかそうな豊かな胸」
「「……」」
「……ヒナトが自慢してましたよ」
ドンドンドン!!
「……兄上、抗議はいいので早く着替えてください」
「俺は興味がある。そこをどけろヒナト」
「却下です。じっくりと私も見れてないのですから」
「力付くで行かせて貰う。覚悟しろヒナト」
「ええ、私は兄上を護ります」
ガチャ
「五月蝿いぞヒナト。あとハルト君。興味があるなら他の令嬢にしてくれ」
ドアの鍵が開き。ヒナトは振り向き、ハルトはヒナトの肩を掴んで覗く。セシルも気になるのか読んでいる小説に栞を入れて机に置いた。
「兄上!?」
「おおおお!?」
「……へぇ。男装……でもないですね」
エルヴィスの服装はブーツに黒いロングソックス。短いスカートと上が一緒になった服を着る。紺色に金色の紐や刺繍がヴェニス家の葉枝の家紋であり。白いマントもあり何処か硬い雰囲気を放つ。髪は後ろでまとめ、一本として下ろす。
「ヒナトがスカート以外を嫌がる。だが、これなら文句はないだろ!!」ペチペチ
エルヴィスは自分の太ももを叩き、主張する。
「ああこれは。新しいですね。兄上……モデルは?」
「騎士の礼装を女性向けにズボンをスカートにしただけだ。ロングソックスは肌の露出が何故か恥ずかしいので履いてる。男装過ぎると変だが、これならまだファッションで通せる。白い目でも見られにくい」
「……へぇへぇ……エルヴィス。なかなか……」
「ハルト、目を潰されたくなければ後ろを向け」
「いいじゃないか。ほぉ……綺麗な令嬢だな本当に」
「兄上、野獣が居ますのでお気をつけを」
「ハルト君は令嬢を襲うことはない。襲ったらおしまいだからな」
「エルヴィス。わかる? 大変だからね……追々」
「……僕にはわからないけど。エルヴィスさん似合います。かっこいいです」
「本当か!? ありがとうセシル君」
「……はい、あぁ……照れますね」
「兄上、似合います」
「ヒナトがいいなら。私服はこういうのにしよう」
「……たまにドレスも見てみたいです。兄上」
「……う~む。嫌だ」
ガチャン!!
「こんにちは!! 殿方!!」
大きく扉が開く音に4人は入ってきたバーディス嬢を見る。挨拶をする4人にバーディスは一人を指差して驚いた声を荒げた。
「何、それは!? その服は!?」
「どうですか? これで行こうと思うのです。駄目でしょうか?」
「いいえ、ちょっと見せてちょうだい」
バーディスはエルヴィスの周りをぐるりと周り、微笑み。楽しそうに眺め続ける。
「……へぇ、こんな男装? いえ、これも立派な女性服です。このスカート何ですか?」
「タイトスカートと言い。ぴったりとしたスカートなのですが……ここに切り込みが入り。そこまで動きづらくないです。邪魔になるヒラヒラしたものもなく。スカートを捲ってヒナトが覗きにくい。俺はこれが一番いいと思います」
エルヴィスとヒナト以外がヒナトを一斉に視線よ寄せて何か言いたそうに瞳に圧力を込めた。
「……私を見ないでください」
それにヒナトは手を突き出し壁を作るほうにジェスチャーをして苦笑いをする。
「へぇ~こんなスカートもあるのですね」
「主流ではないです。娼婦館などにはよく入れるのですけどね。納入実績はそうです」
「娼婦……そう言われると淫らな服装に見えますね」
「淫らに見えようとフリフリしたスカートのが自分にとって嫌なのでこうなった」
「……ふむふむ。いいじゃない。男らしい女性って魅力的ね。それにマントで男装ぽく見えるけど外せばちょっと足に自信のある令嬢の服にも見える」
「確かに……」
エルヴィスとバーディスが色々な衣装に意見を言い。エルヴィスはメモを取って細かな修正点を書き込んでいく。よかった部分も書き込み。二人だけの世界となる。
「ヒナト……エルヴィスはさ……本当に男だったのか? 女子のファッショントークしっかりとしてるぞ」
「昔からファッションは勉強してました」
「……理由があるんだね」
「ええ……立派です」
ヒナトは遠い目をし、昔を思い出したあとに兄上に視線を戻して見続け、ハルト、セシルは興味が無さそうにする。そして、今日も各自の自由な時間を過ごすのだった。
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