第五話 村での生活 後編

 宴が始まった。


 他の人達は、音楽に合わせて踊ったり、誰かと談笑しながら酒を飲んでいるが、俺はただひたすら料理を食べている。


「戦士様、私と踊っていただけませんか?」


「絶対ヤダ」


 しょんぼりするクレア。


 なんか俺、酷い奴みたい。


「おい! 泣くな! 俺は傷が痛むから、断ったんだ」

「あ。何かすいません。それじゃあ、お酒を……」

「俺は酒を飲めない」

「なら何をしたらいいのです?」


「? 何もしなくていいぞ」


「あなたがそう思っていても、私はあなたのために何かしたいのです!」


「そうか。なら、そこの焼肉を取ってくれ」

「…………」


 クレアが無言でどこかに行ってしまった。


 俺はクレアに何か悪い事をしたのかな?


 女の子の気持ちはよく分からん。



***



 俺の寿命 残り 三 週間


 怪我はほとんど治り、普通に歩けるようになった。




「なあ、クレア」


 俺は、部屋の掃除をしていたクレアに話しかけた。


「戦士様、何かご用ですか?」

「何か俺に手伝える事はあるか?」


「そんなに気を遣わないでください。戦士様はこの村を救って下さった英雄なのですから、ここでのんびりしていてください」


「そうじゃなくて、もう怪我も治ったし、軽く体を動かしたいなと思って……」


「なら、畑仕事を手伝ってもらえますか? 人手が足りていないのです」

「おう! 任せとけ!」




 畑仕事をして、久しぶりに体を動かしたら、もの凄く疲れた。


 でもそれ以上に、体が自由に動くことが嬉しかった。



***



 俺の寿命 残り ニ 週間


 体力もだいぶ回復して、リハビリがてら畑仕事を始めた。

 最近の楽しみは、自分で採った食材を食べること!




 今日は、村の中を流れる川で魚釣りをした。


 釣れた魚は五匹。その内の全てが、今日初めて見た魚だ。


 この魚たちが食べれるのか、食べれないのかは分からないが、とりあえず持って帰ってクレアに聞こう。




 俺は村長さんの家に帰ってきた。


「おかえりなさいませ。戦士様!」

「ただいま。お土産があるぞ」

「お魚さんですか。今すぐ焼きますね」

「おう!」


 良かった。この魚は食べれるらしい。




 クレアが焼いてくれた魚は、脂がたっぷりのっていて美味しかった。




 もう空が暗くなったので寝室に入ったとき、自分が焼き魚と汗でかなり臭くなっていることに気付いた。


「久しぶりに風呂でも入るか」


 俺は脱衣所の扉を開け――――


「…………」

「…………」


 今まさに服を脱ごうとしていたクレアと目が合った。


 クレアが持ち上げている服の隙間から覗く、引き締まったお腹を観察していたいが、今はそれどころではない。


「え?」

「ん?」


 静寂が世界を支配した。


「お、おお、クレアも今から風呂か?」

「え? ええ」


 何聞いてんだ俺は?


「戦士様、お先にどうぞ」

「あ、ありがとよ」


 俺は脱衣所で服を脱ぎ、浴室に入った。


「戦士様、出来れば、私が出てから服を脱いでほしかったです」

「…………すまない」


 湯船の熱気と、羞恥で、自分の顔が赤く染まっていくのが、嫌というほどよく分かった。

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