第六話 魔獣襲来

 俺の寿命 残り 一 週間


 もうすぐ俺は死ぬ。

 だから――いや、それでも、俺の残りの人生を精一杯生きるつもりだ。


 さあ! 畑仕事を頑張ろう!




 いつも通り、畑に向かっている途中、誰かの叫び声が聞こえた。


「大変だ! ま、魔獣が出たぞ!」


 体中に傷を負い血だらけの男が村に入って来た。


 俺は急いで男に駆け寄る。


「魔獣はどこだ?」


「ここから、南西です。この村に向かっています」


「分かった。準備ができたらすぐに討伐する!」


 村長の家に向かおうとした俺を、男が呼び止めた。


「戦士様……お待ちください。一人であいつを止めるのは無理です!」

「大丈夫さ。俺は強い」

「ですが、あの魔獣の力はもっと上です。雇っていた腕利きの護衛七人が、束になっても敵わなかったのですよ!」

「…………とりあえず、村長の家まで運ぶ。そこで治療してもらえ。それに、詳しい話も聞きたいしな」


 俺は血まみれ男を背負い、村長の家へと向かった。



***



 ベットに男を寝かし、医者が回復魔法をかける。


 男が治療を受けている間に、俺は武器や薬草などをそろえ、魔獣を討伐する準備を終わらせた。


「クレア、少し席を外してくれ」

「……はい」


 クレアが、部屋から出て行った。


 これで、ここにいる者は、血だらけだった男と村長と俺だけだ。

 魔獣の話を始めよう。


「どんな魔獣が出たんだ?」

「人の三倍くらいの大きさの熊みたいな魔獣です。そいつに、九人もの護衛が皆殺しにされました」


 出現した魔獣はかなり強力なようだ。

 この村にいる俺以外の全住民が非戦闘員だ。

 もしもこの村に魔獣がやってきたら、間違いなく壊滅的な被害を受ける。


 すぐに、近くの町へ避難した方がよさそうだ。


「村長、村人を連れて、近くの村へ避難してください」

「承知しました。しかし、戦士様はどうなさるのですか?」

「俺は魔獣を見てくる」


 その時!

 バタンと戸が開き、クレアが入って来た。


「危険です! やめてください!」


 クレアに話を聞かれてしまったらしい。

 こうなると思ったから、クレアに席を外してもらったのに……


 まあいいや。


 俺は子供に言い聞かせるように、


「大丈夫。偵察に行くだけだから、戦いはしない。危ないと思ったら、すぐ逃げる。だから、大丈夫だ」


 と言った。


「本当ですか?」

「俺が嘘をついたことがあるか?」

「あります!」


 キッパリと言い返されてしまった。

 クレアの返事は聞かなかった事にしよう。


「まあ、大丈夫だ。行ってくる」


 俺は偵察に行くため扉に近づき、バタンと勢いよく開いた扉に鼻の頭をぶつけた。

 痛いよう。


 部屋に飛び込んで来た男が、鼻血を出して痛がっている俺を無視して、悲鳴の世な声を発した。


「たいへんです! 魔獣が、村に侵入しました!」

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