第九話 無限の幸福と辺境の勇者
気が付くと、知らない部屋のベットの中にいた。
「うう……」
俺が呻き声をあげると、ロングヘアーの少女が駆け寄って来た。
「お目覚めになられたのですね」
「クレア?」
「? クレア? 誰のことです?」
この少女はクレアじゃないのか。
てか、なぜ俺はこんなところにいる?
えっと……確か、村に魔獣がやってきて……
「村は、皆はどうなった?」
「え? 村? もしかしてあなた、川の上流にある村の方ですか」
「多分そうだ。で、皆は、無事なのか?」
俺の問いに少女は何も答えてくれなかった。
少女はただ、申し訳なさそうに、目線を反らした。
「嘘……だろ?」
「…………」
ああ。
俺は、何も守れなかったのか。
村も、皆も。
***
魔獣の攻撃を喰らい、吹っ飛ばされて、村を流れる川に落ちたのだろう。
俺は川に流されて、この町までやって来たらしい。
俺がこの町に流れ着いた時、体は裂傷や打撲で、まさしくボロ雑巾のような状態だった。
そんな俺を、心優しい少女が病院に運んでくれたおかげで、俺は生きている。
もう二度と、剣を持つことは出来ないだろうと、医者に言われたが、もうそんな事なんてどうでもいい。
今後一切、戦う事は無いから。
***
俺は「旅に出る」とだけ書いた置手紙を残して、病院を去った。
***
旅の末、のどかな村に辿り着いた。
俺は村の門をくぐり、村に入る。
村では、この村の全ての人が、俺を温かく笑顔で出迎えてくれた。
「「おかえりなさいませ」」
俺は皆に笑顔で手を振る。
一人の少女が、俺に駆け寄り、抱き着いて来た。
「これからは、皆で一緒に暮らせるのですよね!」
少女は、こんな非力で、馬鹿で、ただの野盗である俺を、野盗と知りながら温かく接してくれるらしい。
俺は、心の底から嬉しくなった。
「ああ。これからは、楽しく暮らそう。俺と、村の皆と、クレアで――」
―― 完 ――
辺境の勇者 フカミリン @1575261
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