第三話 目覚め

 気がついたら、知らない建物の暖かいベットの中にいた。


 とりあえず起き上がろうとしたが、腹部と肩に激痛が走ったので諦めた。


「あ、、お目覚めになられたのですね」


 十五歳くらいの、栗色のロングヘアーが可愛い女の子が、俺の顔を覗き込んでいる。


 戦士様って誰だろう? と思ったが、そんなことはどうでも良く思えた。

 意識がかなり朦朧としているし、体が動かない。


 寝よう。

 今はもう一度眠りたい。

 願わくば、この可愛い少女に添い寝してもらいたい。


 しかし少女は、俺を静かに眠らせてはくれなかった。


「先日は本当にありがとうございます。おかげで、この村は救われました」


 は?

 こいつは、俺みたいな野盗に向かって何言ってんだ?

 この村には、野盗を歓迎する習慣でもあるのか?


 俺がキョトンとしていると、少女が事情を説明してくれた。


「覚えていないのですか? 戦士様は昨日の夜、この村を占拠していた盗賊団を退治してくれたのですよ」


 あいつら盗賊団だったんだ。

 知らなかった。


 ん?

 待てよ、俺は、村を襲うつもりが、村を救ったって事?


 動機はどうあれ、俺はこの村を救ったんだ。

 正々堂々と大金を請求してやる!


「村を救って下さったお礼をしたくて、村の皆でお金を集めたのですが、これだけしか集まらなくて……」


 しまった。先手を打たれた。


 そう思いながら、差し出された革袋を受け取る。

 袋は思っていたより軽かった。


 一か月くらいなら余裕で生活できそうな額はありそうが、俺の借金と比べたら、天と地ほどの差がある。


 でも、美少女がお金をくれると言っているのだ。

 すくなくても、当分の生活費にはなる。


 ありがたく受け取ろう。


「ありがとう。このお金は、そこのタンスにしまってもらえるかな?」


「うん!」


 少女に袋を渡したとき、腹と右肩に電撃が流れた。


「ううっ」


「大丈夫!? お医者さん呼んでくるね」


 少女が部屋を飛び出していった。


 こんな小さい村にも、医者がいるんだ。




 少し待つと、医者がやって来た。


 白衣の天使が来る事を期待していたのだが、やって来た医者は白髪のじじいだった。


 彼に布団をどかされて初めて気付いたのだが、俺の腹と肩が包帯でぐるぐる巻きにせれていて、ピクリとも動かせないような状況だった。


「血も滲んでいないし、大丈夫じゃろ。じゃが、ひと月は絶対安静じゃぞ。ほれ、薬じゃ。痛みが引くぞ」


 医者は薬を置いて、さっさと退室した。


 それと入れ違いで、さっきの美少女が部屋に入って来た。


「戦士様、御食事を持ってきましたよ」



***



 こうして、現在に至る。

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