第二話 襲撃開始
「うおおおおお!」
気合一閃!
村の入り口で見張りをしていたゴロツキを斬り捨て、勢いよく村の門の向こう側に転がり込む。
その時。
視界の端で、何かが月の光に照らされて煌めいた。
俺はとっさに身を捻る。
何かは俺の目の前を通りすぎ、近くの地面に刺さった。
おいおい!
いきなり矢を撃ったら危ないだろ!
お返しと言わんばかりに俺は、用意していた短剣を矢が飛来した方へ投げつける。
「うっ」
どこかから聞こえた呻き声。ラッキー!
と、思っている間にも、いかつい男どもが、集まって来た。
その数なんと七人!
一対五なら勝てる自信があったのだが、流石に一対七は無理がある。
はあ……
俺はここで死ぬのか。
十八年の人生。あっという間だったな。
なれない犯罪なんかするんじゃなかった。
そもそも、詐欺なんかに引っかかった自分が恥ずかしい。
ああ、クソ!
過去の事は悔やんでいても仕方がない。
死んでたまるか。絶対に生き延びる!
俺は、ハーレムを作るんだ。それまでは、死ねない!
愛する者(俺と未来の彼女)のため、負けられない!
「うおおおおお!」
剣を振りかぶり、近くにいた大男に向かって跳びかかる。
大男は俺を迎撃するため、剣を構え、白目をむいて仰向けに倒れた。
大男の眉間には、一本の短剣が刺さっている。
俺は卑怯者なんでね!
生き残るためなら何でもするんだよ!
俺は鮮やかに着地し、次の標的へと斬りかかる。
やっぱりやめた。
俺が踏ん張ってブレーキをかけると、俺の前を一本の矢が通り過ぎ、矢の軌道上にいた哀れな剣士に突き刺さった。
「おい!」
リーダーと思われる別の大男が、矢を放った者を睨みつける。
「すいません!」
睨まれた奴が、リーダー(仮)に頭を下げる。
余所見厳禁、油断一秒怪我一生! その一瞬が命取り!
「
俺が使える唯一の魔法、炎の矢が弓使いの右肩を貫いた!
彼の右肩は黒く炭化し、煙を上げている。
命に別状はないだろうが、戦力は奪えた。
これで三人。残るは四人。
後ろから振り下ろされた戦斧を、剣で叩いて軌道を逸らし、みぞおちに蹴りを入れる。
よろめき、倒れる斧野郎。
突如として背中から伝わる重たい衝撃。
リーダーに蹴られたらしい。
バランスを崩した俺は、剣を斧野郎に刺し、杖代わりにしてバランスを取り戻す。
四人目!
リーダーの首を狙った横薙ぎの一閃を放つ! が、リーダーが手にしている大剣によって防がれた。
まだまだ!
俺が相手の剣をすくうように斬撃を放ち、リーダーがそれをかろうじて防ぐ。
そんな攻防が、二度、三度続き、左肩に激痛が走った。
「ううっ」
見ると、肩に矢が刺さっている。
俺は矢を力任せに引き抜いた。
リーダーは、その一瞬の隙を見逃してはくれなかった。
彼が振るった剣は、何とか受け止める事が出来た。
しかし、左肩を負傷したせいで剣の重みを支えきれず、剣を遠くに飛ばされてしまった。
唯一の幸運は、飛んで行った剣が、敵の一人に突き刺さってくれたことだ。
彼の運の無さに感謝しよう。
これで、残るは二人だ!
俺は、予備の、細身の長剣を抜いた。
これなら、大剣と違って、片手で扱うことができる。
さあ、リーダーを倒そう。
でもその前に、
「
俺の肩に矢を当てた奴の胸に、焦げ臭い風穴があいた。
あと一人……
俺はリーダーの喉を狙って剣を突き出し、同時に、リーダーが体制を低くして放つ横薙ぎの一閃。
腹に、太く、赤い筋が走り、喉の奥から熱い液体が溢れ出す。
意識が薄れ、倒れる俺。
ああ、俺はこんなところで死ぬのか。
九人も敵を倒せたし、俺にしては上出来……かな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます