辺境の勇者

フカミリン

第一話 追憶

「今日はいい天気だな」


 俺は、俺の車いすを押してくれている、栗色のロングヘアーが良く似合う少女に話しかける。


「そうですね。戦士様」

「クレア、今日は天気がいいから気分がいい。村を一周してくれないか?」

「はい!」


 クレアの元気な返事と共に、車いすが出発した。



 俺たちが畑の前を通ったとき、美味しそうな野菜を手入れしているおじさんを見つけた。


「おいしそうだな。すこしわけてくれよ」

「いいですよ。戦士様は野菜がお好きなのですね」

「とくに甘い奴が好きだ」

「また、いい野菜が出来たら持っていきますね」

「おう!」




 俺とすれ違う者は皆、明るく笑顔で接してくれる。


 怪我の所為でまともに歩くことも、左腕を動かす事も出来ないが、クレアのおかげで何一つ不自由していない。


 俺は今のこの村の生活が好きだ。


 皆優しいし、クレアは可愛い。


 しかし、皆が俺の秘密を知ったとき、皆は俺をどうするだろう?

 村から追い出すだろか?

 それともこの世から追放するだろうか?


 どちらにせよ、良い結果にはならない。


 俺はもうすぐ死ぬ。


 俺が死ぬまでの少しの間だけでも、幸せに暮らしたい。


 だから、俺の秘密を皆に知られるわけにはいかない。






 少し時間を時間を遡ろう。


 俺がこの村にやって来た日まで――――




 いきなりだが、俺は借金まみれになってしまった。


 理由は単純。

 かなり悪質な詐欺に引っかかったからだ。


 借金の額は、この国の国民の生涯収入ほど。返済期限は二か月後まで。ちなみに、担保は俺の臓器だ。


 俺に取り付けられている「呪いの首輪」が、借金取りたちに居場所を送り続けているから、逃げられない。

 もし仮に逃げ切れたとしても、二か月後、この首輪が俺を絞め殺すようにセットされているから、命は助からない。


 俺が生き残るには、二か月で生涯収入ほどの金を稼ぐしかないのだ。



 そんなの無理に決まってる。と、思ったそこに君!


 世の中には、すぐに大金を手に入れる方法があるのだよ。


 それは――――強奪だ!



 適当な村でも襲って、全財産を強奪して、お金を手に入れよう。

 それしかない!


 最近はどこの村にでも、魔物や盗賊対策のために、兵士が数人いるはずだ。


 それでも大丈夫。


 幸い俺は、剣の腕に自信がある。


 並の兵士五人が相手なら、束になって斬りかかられたとしても、倒す自信がある。




 というわけで俺は、辺境にある、人口三十人ほどの小さな村の近くにいる。


 今は夜。


 襲撃するには、ぴったりの時間だと思う。


「よし。行こう!」


 俺は愛用の大剣を抜き放ち、村に突撃した。

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