ナイチンゲール看護婦人会第一野戦病院


 さすがに疲労困憊の四人、とくにコルネリアは、とてつもなく疲れていた。

 血だらけ、そう全身血まみれで、綺麗な金髪も真っ赤になっている。


 オルガが走ってきて、四人を見た瞬間、

「入浴準備! 軽傷の方は、そのまま警備をお願いします」


「とにかく血を洗い流して下さい、そして少し休んでください」

「いくら夫人の方といえ、このままでは倒れますよ!」


 オルガが陣頭指揮をして、有無をいわさぬ迫力で、四人に入浴を命じた。

 一人当たり女官を二人付けて、強引に服を脱がし、丁寧に身体を洗われて、これまたド迫力で安静を命じられた。


 四人が目覚めたのは二日後、野戦病院は再び移動の準備を、始めているようだった。

「お目覚めですか? 婦人会は移動しますが、どうされます?」


「お邪魔でなければ……」

「皆一緒に来ていただければと、思っているようですよ」


 その後、約一月、タリンが降伏するまで、野戦病院はあちこちを転戦、モルダウの四人は忙しく働いていた。

 その頃までには、四人は簡単な治療魔法程度なら、使えるようになっていた。


 ナイチンゲール看護婦人会の、臨時第一野戦病院は解隊。

 女官さんたちはシビルへ帰るそうだが、やはり若い女官さんたちが多いようで、皆、コルネリアたちを姉のように慕ってくれて、涙を流して別れを惜しんでくれる。


「コルネリア様、今度、遊びに行ってもいいですか?」

「好いわよ、でも皆さん女官ですから、中々出てこられないでしょう?私の方からそちらへ行きますから」


「その時は皆、集まります!」


 でも、その様な心配は無用になる。

 モルダウ居館というのは、そもそも、モルダウの迎賓館みたいな王宮を、ウィルヘルムがヴィーナスへ捧げ、それをコルネリアたち四人が預かり、管理する事になっている場所、つまりモルダウ王国に浮かぶ、ヴィーナス直轄領となる。


 この度のモルダウの寵妃たちの活躍を、オルガが詳細に報告して、それがヴィーナスの所まであがったようだ。

 で、タリン内戦の後始末が終わった後、臨時第一野戦病院は、常設の第一野戦病院となり、ロンディウムに開設されることになった。


 司令部はモルダウ居館の一室におかれる。

 モルダウ居館には、本当に特別の異空間倉庫、つまり空間転移の通路が、キリーという町に繋がっている。


 第一野戦病院設立により、もう一本、シビルと空間転移通路が繋がる事になり、第一野戦病院勤務の女官さんたちは、この特別通路を通れるようになった。


 これは特例中の特例、奉仕の魔女団以外で、一般の女官がこのような通路を通れるのは、ナイチンゲール看護婦人会の、第一野戦病院勤務の女官さんだけとなっている。


 常設の野戦病院ということもあり、入浴施設も完備、コルネリアたち四人には、その維持管理も委任される事になった。


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