この世の果てまで


 そして、その時がやってきました。

「いままで、ありがとうございました、しばらくはこられません」

「ときどきは来てください、待っています、ダニエラも寂しがりますので……」


 リリータウンでは、アリスさんがてんてこ舞いをしています。

 突然、リリータウンの機能が次々と停止しだしたのです。


「こんな時にどうしたのですか?」

「マスターをお呼びするために、力を振り絞りだしているのです、リリータウンに回す力がないのです」

 凄い音とともに、リリータウンの灯りが消えました。


「いけない!動力不足で、メインシステムがダウンした」

「アリスさん、雨が!リリータウンに雨が降ってきた!」


「消火システムが作動したのです、どこかで火が出たのでしょう、サブシステムがもうすぐ稼動します、それまでの辛抱です!」

 サリーたちはとにかく食堂へ逃げましたが、そこも雨が降っています。


「サリーさん、仕方ないわ、とにかく雨をしのぎましょう」

 アリスさんが、ポップアップテントをだしてくれましたので、二人はテントに逃げ込みます。


「困ったわ、これではマスターに、ここへ来てもらうわけにはいかないわ……」

「そうね……」

「仕方ないわ、サリーさん、マスターの世界へ、お迎えに行ってくれませんか?」


「アリスさんはどうするの?」

「リリータウンを管理するのが私の役目、何とか修復します」


 サリーさんは狭いテントの中で着替えをします、この日の為にアリスさんが用意した服です。


 着替えが終わると、アリスさんが、

「では、お願いします」

 そういわれたサリーさんでしたが、突然、意識が遠のきました。


 そして気がつけば、そこは見た事もない町、大勢の人が歩いており、凄く高い建物が林立する町、自分が空に浮かんでいるのがわかりました。


 ふと、眼の下を見ると、だれかが鉄の車にぶつかって……跡形もなく……

 すると、光輝く塊がスーと浮かび上がって、雲の中に入っていきます。

 サリーさんはそれを追いかけるように、雲の中に入ります。


 その光が雲の中に浮かんでいます、サリーさんはそれが使える主であると確信しました。

 何かに突き動かされるように、サリーさんは頭を下げながらいいました。


「あなたさまのお力が必要なのです、ぜひに、おねがいします」

 後は何をいったのか記憶にありません。


 光は突然かき消え、そしてサリーさんも、再びエラムへ引き戻されたような気がしました。

 気がついた時は、再びリリータウンのテントの中です。


 アリスさんが、

「戻ってきましたね、少しマスターの世界を見られたのですね……羨ましいですね」


「見た事もない光景でしたが、そこで光の塊に遭いました、出会った瞬間に主さまと判りました」

「この街の力も残り少ないようです、サリーさんをマスターのもとに転移すると、しばらくは稼働出来ないでしょう」


「何とかサブシステムが動き始めましたが、復旧するまでは、サリーさんがマスターを守ってください、では転移を始めます、しばらく会えませんが、マスターを頼みます」


「アリスさん……判りました、後で会いましょうね」

「そうですね、今度はマスターと一緒にお風呂にはいりましょう」

「そうしましょう」


 私はマスターを、お迎えに行きました。

 そしてその方はいたのです。


 ひと目お会いした瞬間に、私は全てを捧げる気になりました。

 しかしその夜、私は主さまのお優しさに触れてしまい、しかも……

 レディーズ・メイドに任命していただき……


 お嬢様……このエラムの主……そして私、サリーのご主人……

 私はお仕えします、いえ、お仕えさせていただきます。


 私の全ては、お嬢様の為に……

 どこまでも……

 そう、この世の果てまでも……


    FIN


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