皆の面倒は私が看るの!


「そこまでにしてもらおうか、スケベ野郎」


 蹴り飛ばされた手下ですが、運の悪い事に股間をけりあげられて、可哀想な人生を今後送る事になります。


 ビクトリアさんが、

「アリス、大丈夫か?」

 と、声をかけますが、アリスさんは気がつきません。


「ダフネ、奴らどうする?」

「黒の巫女様の女に手を出した以上、命で償ってもらいたいが、人さらい組織を壊滅させるために、アテネが生け捕りにいっている」


「生け捕りにしても、白状するかな?」

「私の手料理でも口にねじ込めば大丈夫、近頃は私も自分の料理がどんなものか理解したから」


「たしかにあれを食べさせられたら、二口目には白状するだろうな」

 そう、ダフネさんの手料理は毒薬とまでいわれており、ダフネさんが魔女といわれる原因でもあります。


 なにをどうすれば、これほど危ない料理が出来るのか、ヴィーナスさんも首をかしげる始末、四百五十年以上生きているのに、変な方向に、料理の腕を上げたようです。


「……複雑ね」


 そこへアテネさんが、ボロボロになった一団を、数珠つなぎに縛り上げて引き連れてきました。

「アリスの友達も連れてきた、どうする」


「コナ自治領を預かるドリスさんが、人が欲しいと云っていました」

「上のダガさんはかなり聡明そうです、とりあえずホラズムの女官として採用しましょう」

「それに二人ともかなり美しいですから」


 女官というのは、ヴィーナスさんのハレムに勤める、メイドさんのような存在。

 エラムの女の憧れの職業ですが、一応、ヴィーナスさんの女奴隷というのが前提です。


 しかし自らの給料で自身を購入することができますし、その間に、各種の職業教育を受けられます。

 自らを購入し、女官を退官すれば就職なり結婚なり、大変有利になります。


 なぜ会ってもいないのに知っているのかって、薫、つまりマスターの愛人の一人でもある、私が監視していたからです。


 私は遥か昔から、この惑星エラムの監視を任務としていますから、このような事はお手の物。


 全てにけりがついたころに、アリスさん気がつきます。


「おはよう」

 と、アナスタシアさんが云いました。

 アリスさんのテントの周りには、幾つもテントが張られています。


「これは……」

「アリスが大変と薫さんが云ったので、皆でやってきたのよ」

 人さらいは、ビクトリアさんとアテネさんが、叩きのめしたわ」

 サリーさん。


 そこへダガ姉妹がやってきて、

「アリス様、大丈夫ですか、私たちは皆さまのお力で助けてもらいました」

「しかもホラズムの女官として購入されました」


 明日に生きる道が出来たのです。

 とても嬉しそうに姉妹はいいました。


「アリスさん、頑張りましたね」

 と、アナスタシアさんが、優しく抱き締めてくれます。


「……皆さん……ありがとう……」

 この時、アリスさんは在る決意をします。


「皆さんの面倒は、私が必ずみます!」

 ビクトリアさんが笑いながらいいました。

「ぜひ頼む、洗濯物がたまっているのだ」


「ビクトリアさん、ご自分で洗濯してください、今回のお礼に……洗剤を支給しますから……」

「いや、アリスの洗濯の仕上がりは素晴らしい、それにアリスがいなければ、街がスラムになる」


 なんという戯言……でも、本当にありがとう……

 皆さんは私のお姉さん……賢い妹は、駄目な姉たちが大好きなのです。


    FIN

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