私を頼りにしてね。


 アデラさんに、ダガさんの様子を見に行ってもらいます。

「アリス様、姉になにか着る物はありませんか?」

 たしかにそうです……

「ダガさん、元気になったのね、すこし火の番をしていてね」

 

 アリスさんはテントの中に行きますと、ダガさんが起きていました。

「起きられるの?」

「はい、できましたら、何か着る物を貸していただけませんか?」


 たしか通販カタログにキッズツナギ服があったはず……

 少し小柄ですし……身長からして……


「作業服ですが、これで良ければ、着方判る?」

 ツナギ服など、このエラムには在りませんし……仕方ない、着せてあげましょう。


 下着一つのダガさんに、服を着せていますと……

 ヴィーナスお姉さまの、ムラムラが分かるような気がする、アリスさんです。


 アリスさんに服を着せてもらっているダガさん、なんといいますか、恥ずかしそうに、そして色っぽい仕草なのです。


「すこしおトイレが不便なのですが……さて立てますか?」

「はい」


 アリスさんの後を、従うように歩くダガさんです。


 まだふらつくダガさんですが、急速に元気になってきています。

 アリスさんが作った簡単な夕食をたいらげ、姉妹はポツポツと、身の上を話し始めました。


「私たちはもともと、マリノ子爵領に住んでいました」

「やっと戦乱も終わり、ホットしていた時、両親が突然の流行病で、他界してしまいました」

「相続した親戚は、私たちを奴隷に売り飛ばしたのです」


「買ったのが南部の人で、その元へ運ばれる途中、今度は盗賊に会い、さらわれて……」

「必死の思いで逃げたのですが……疲れ果てて、あの湖畔で倒れていたのです」


「これからの、あてはあるのですか?」

 姉妹は首を振り、俯いてしまいます。


 アリスさんには、姉妹の考えがわかりました。

 そしてヴィーナスの気持ちも、初めて理解出来ました。


 姉妹はアリスさんに助けてほしいのですが、アリスさんの迷惑を考え、口にはだしません。

 むしろこのまま去っていこうと、考えているのです。

 その先はみじめな奴隷として、玩具にされるか、野垂れ死にかを、覚悟しているのです。


 アリスさん、初めて損得抜きの、非論理的な考えに支配されました。

 なんとかしなくては……


 いまここでアリスさんが見放せば、姉妹の明日は、地獄が待っています。

 それを知って、ほっとくわけにはいかない……

 姉妹は何一つ、責められる事はしていない。


 アリスさんは無意識に、ヴィーナスのように云っていました。

「これも何かの縁、私を頼りにしてね」 


 嬉しそうなダガ姉妹、アリスさんは二人に対する責任を感じました。

 それでも、なにか込みあげる高揚感を、感じたのです。


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