ダガ姉妹


 妹さんに向かって、

「お姉さんの服を脱がせて、濡れたままではいけないわ、これで身体を拭いてあげて」

 と、タオルを差し出します。


 さらにミルクスティックと呼ばれる、ミルクと砂糖を練り固めたバーを差し出して、いいました。


「とにかく温かい物をつくるわ、それまでこれを食べていてね、ゆっくりよ、ねぶるように食べるのよ、さもないとお腹を壊すわ、この状態で下痢を起こせば大変ですよ」

 姉妹は素直に頷きます。


 妹はミルクスティックを口に入れ、姉の服を脱がすと、縣命に姉の身体を拭き始めます。


 アリスさんが、ウッドガスキャンプストーブという、電池でファンを回す、電動ウッドストーブで火をおこします。


 緊急ですので、通販カタログでミネラルウォーターを選択、その水でお湯を沸かし、ココアを作ります。

 そして缶詰のパンを取り出して、食べさせたのです。

 勿論、チーズもいわゆる6pチーズも付けています。


 そして妹と二人で、お湯でさらに身体を拭きました。

 さらに子供女子用圧縮下着セット、という物を与えました、サイズが分かりませんので大きい方です。


「緊急用なのでサイズがおおきいですが、とにかく着てね」

 ここで初めて姉が口を開きました。


「私たちの為に、ご迷惑をおかけしています、その上貴族がつけるような、高価な物をいただくわけにはいきません」

「構いません、私から見れば安い物、貴女が気にすることはありません!」


「でも……」

「なら元気になったら、何かでかえして下さい!」

「……」

 涙をポロポロと流しています。


 アリスさんはドキッとしました。

 ヴィーナスお姉さまも、このような状況に会われたのですね……


 姉の方には、準備していたインナーシーツと、サーモライトビビーサックを渡し、

「これにくるまって休んでいてください、妹さん、夕食の準備を手伝ってくれますか?」

「お姉さんは大丈夫です、空腹で倒れたのです。だからもっとチャンとした物を、食べさせる必要があります」


 アリスさんは、使い捨てカイロを幾つもだして、下着の上から張り、さらにいくつかを姉に渡しました。

 身体が温かくなったのでしょうね、姉は静かな寝息をたて始めました。


 妹と二人で、アリスさんは夕ご飯を作ります。

「えぇーと、メインはお肉がいいわね、ハンバーグにしましょう」


 冷凍されたハンバーグを、三つ取り出します。

「次はスープね、コーンポタージュがいいわ、たしかインスタントの粉末があったはず……これこれ」


「あと野菜は……私には野菜炒めぐらいしかできないわ、イタリアンミックスね……これを炒めればOK!」

 独り言を云っているアリスさんです。


「やはりヴィーナスお姉さまのようにはいかないわ、お姉さまなら、おいしい物を料理してくださるのに……」

 たしかに、かなり雑な夕食になるようです。

 ヴィーナスはこの手の料理は達人なのです。


 夜は更けてきます、ウッドガスキャンプストーブの炎だけが、闇を照らしています……

「暗いわ、私、暗いのは嫌い、チョット待っていてね」


 アリスさんは大きいカバンから、ソーラーランタンを取り出して、テントの前などにかけます。

 ほのかな明かりが周囲を照らします。


「私はアリスというの、貴女、お名前は?」

「アデラといいます、姉はダガといいます」

「アリス様は魔法使いなのですか、このような物、初めて見ました」

「まあね……」


 アリスさん、なんとかハンバーグと野菜炒め、それにインスタントのコーンポタージュを作り上げ、乾パンを付けました。


 とても固い乾パン……

「ごめんなさいね、パンはこの乾パンと、さっきの菓子パンみたいなのしかないので……気をつけてね、とても固いから……」


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