困りもののお姉さんを持っている、賢い妹みたい


 珍しく、今日は全員がいます。

 ヒルダさんがサリーさんに、通販カタログで服を購入する相談をしています。


「サリー様、この服なんてどうでしょう?」

「野暮たくはありませんか?もっとお色気がないと、お嬢様を誘惑する事は難しそうですが」


 なんの話しかと思えば……聞こえないふりをして……

 なになに、ヴィーナスお姉さまは、ガーターベルトというのがお好き……メモっときましょう。


 向こうでは相変わらず、ビクトリアさんとダフネさんが、缶ビールで一杯やっています。

 こちらの方がいいですね、私も嫌いではありませんので……


 でもビクトリアさん、口からイカの足が出ています。

 ヴィーナスお姉さまの、愛人さんなのですが……


「アリス、一緒に飲まないか?」

 一応、私は16歳のはず、未成年の美少女の私に、その缶ビールを勧めるのですか?

 でもせっかくだから……

「一杯だけですよ」


 でも……

「ぷはー、やっぱりビールが一番、あれ、つまみがわびしいですよ、ビクトリアさん、イカだけなの?」

「チケットが赤字なのだ!酒代がかさむのだ」

 ダフネさんも、

「私もいささか赤字、おごってよ」


 チケットというのは、このリリータウンだけで通用する、商品購入券のこと。

 毎月定額で、ヴィーナスお姉さまの世界の通貨で、四万五千円分支給されるお給料みたいなもの。


 ヴィーナスお姉さまだけは増額されていますが、後は一律、でも十分なはず、基本的な必要品は、別に支給されているのですから。


 でも16歳に無心するなんて、経済観念が欠落していますわ。

 この方がエラムで、ヴィーナスお姉さまの次に偉い大賢者だなんて!

 どうかしていますわ、でもヴィーナスお姉さまを、黒の巫女の位につけた知恵者なのですよ。


「しかたないわ、私がおごってあげます、なにがいい?」

 通販カタログを調べましょう。

 えぇーと、ビクトリアさんは確か、焼き鳥が大好きなので……


「焼き鳥の塩味とたれ味でいいですか?」

 ビクトリアさん、よだれが出ているじゃないですか!


 いやしくも黒の巫女の愛人ですよ、このエラムの女なら、だれもが憧れる愛人の一人ですよ!

 金のチョーカーを返上してほしいものです。


「アリス、いい女だな、さすがは管理人」

 と、抱きついてきたビクトリアさん。

「お酒臭い!」

「そうか?」


 でもなんか、私は困りもののお姉さんを持っている賢い妹みたい。

 そうです、私がシッカリしなければ!


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