紅茶はいかが?


 こうしてペネロペは、イシュタルの寵妃の一人として、皆から尊敬されるようになりました。

「ペネロペ様、縫製を教えてくれませんか?」

「ペネロペ様、クッキーを焼いてみました」


 以来、ペネロペのお茶の時間には、だれかがやってきています。

 そしていつもこう云うのです、「紅茶はいかが?」と……


 ある日の朝、ペネロペがそわそわしています。

 朝食を軽く食べて、突然に、

「エリカさん、お風呂に入ります」


 普通、ペネロペは、朝からお風呂などは入らないのに、しかもこの日は念入りに入っています。


 湯上りのペネロペさん、とても色っぽくなっています。

 昼食も上の空、いそいそと鏡の前に座ると、

「ねえ、エリカ、髪型はどうしましょう……」


 そうです、今日はイシュタル女王の夜に侍る日……


 エリカに手伝わせて、念入りに髪方を整え、さらに念入りに化粧をし、ああでもない、こうでもないと着ていく服のファションショー、内心、エリカは笑いそうになります。


 ペネロペが、小娘のようにウロウロしているのです。


「エリカ、どうしましょう」

「どうしましょうといわれても、お風邪でもひきますか?」

「くだらない戯言を、待ちに待ったのですよ、イシュタル様に愛してもらえるというのに!」

「なら落ち着いて、さもないと嫌われますよ」


 エリカの一言で、すこし落ち着いたペネロペでした。


 大騒動の果て、ペネロペは、呼びに来た奉仕の魔女団の一人と共に、イシュタル女王が、今いる場所へ転移していきました。


 一人ぼっちのエリカ……

「ペネロペ様がいないと寂しいわ、でもいいわね、今夜は……」


 エリカもお年頃の女、しかもハレムの一員、ひそかに寵妃にと願っています。

 一応のエッチの仕方は教えられていますので、それなりの知識があります。


 自然と頭の中では妄想が渦巻いて……

「いけない、もう寝ましょう」

 エッチな夢を見てしまったエリカでした。


 次の日、昼もかなり過ぎたころに、ペネロペは帰ってきました。

 このような時のペネロペは物凄く妖艶な美女、エリカが見てもゾクとしてしまいます。


「ペネロペ様、いかがでしたか?」

 振ってはいけない話題とは知っていましたが、ペネロペの為に聞いてあげる事がエリカのいわば義務。


 うれしそうに、ペネロペはエリカに夜の話しを詳細に喋ります。

 自分でも、今夜は悶々とすると、覚悟を固めているエリカさんではあります。


 内心のため息を押し殺して、聞いていますと、

「そういえばイシュタル様から、お手製のお菓子をいただいたの、パンケーキというものだそうです」


「チョコレートという物も貰ってきたわ、何でも甘くて、物凄くおいしいそうよ、一緒にいただきましょうね」


「エリカさん、紅茶はいかが?」

 ペネロペのいつもの口癖がでました。


    FIN

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