乱入


 突然、喚声が聞こえ、女官たちの悲鳴が聞こえました。

「ペネロペ様、ドリス様、早くお逃げ下さい、反乱です」

 そういって飛び込んできた女官が、後ろから来た者に殴られて気絶しました。


 なんと、このジャバ王宮のハレムに、男が乱入したのです、しかも完全武装の兵士達です。

「何者ですか!」


 その中の、一人の男には見覚えがありました、元ジャバ王国親衛隊の副隊長です。

「お救いに参りました、我々がお側にいないばかりに、王は謀反人に殺され、王妃様は御自害、ドリス様はイシュタルの女奴隷にされ、しかしそれも今日まで、しばらくここにいてもらいます」


 副隊長はペネロペに向かって、

「ドリス様は我々がお守りする、現在、ジャバ王宮は我らが制圧した」

「ペネロペ様、ドリス様の名代として、ジャバ王国を指導していただきたい」


「ドリスも私も、今更、王族になどなりたくもありません」

「私たちは黒の巫女様の女奴隷、身も心も巫女様に捧げています、あきらめなさい」


「その様な反応を示されると思っていた」

「所詮は女、イシュタルに散々に抱かれて、まともな考えが出来なくなっている」

「色に狂わされているのが、判らないのか!」


 副隊長は鬼のような顔になり、

「ならお前はイシュタルの女奴隷、ジャバの恥さらし、奴隷の末路を見せつけてやる、女どもを連れてこい!」

 部下が、五人ほどの女性を、乱暴に引き連れてきました。


 彼女たちはジャバ王宮に勤務する女官たち、はっきりいうと女奴隷、イシュタル女王が街の娼館から、買い取った方たちもいます。


「穢れたイシュタルの娼婦ども、今からここで首をはねてやる、貴女もこの者たちと同じと云われるなら、最後に一緒に首をはねてやる!」


 怯えて真っ青になっている女官たち……ペネロペは、

「なら真っ先に、このペネロペの首をはねなさい、前国王を裏切ったのは私でしょう!」


「その娘たちは、単にイシュタル様に購入されただけ、何の罪があるというのですか!」

「貴方も栄光ある親衛隊の副隊長、穢れた娼婦を手にかけても、武勇の誉れにはならないでしょう!」


「誉にはならぬが、イシュタルの物は全て壊してやる」

「このジャバ王宮には不要の物、女と云えども同じ、そうだ、その侍女から始末して遣ろう」


「お待ちなさい!」

「私もイシュタル様の女の一人、ご寵愛を受けている身」

「父を殺した相手に、すすんで身を任せた娘、私から殺しなさい」

 ドリスさんが、白刃とエリカの間に立ちはだかります。


 ペネロペはドリスだけは救わなければと……


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