第18話

 俺がそんな事を思いながら食堂で飯を食べていると、そこに清瀬さんがトレーを持って近づいてきた。

 

「春山君」


「あ、清瀬さんもお昼?」


「うん、そう。隣良い?」


「え? あぁ、全然良いよ」


「ありがと」


 清瀬さんはそう言うと、俺の隣に座りご飯を食べ始めた。

 この学校の食堂は広い。

 全校生徒が全員入っても少し余る位の席数がある。

 メニューも豊富で値段もリーズナブルなので、食堂を利用する学生も多い。


「春山君はカツ丼? がっつりだね」


「これくらい食べないと午後の授業持たなくてね」


「男の子だねぇ~、栗原君はナポリタン?」


「そうだよ。あ、僕お邪魔かな?」


「ううん、大丈夫だよ、私がかってに来ただけだから」


 清瀬さんは直晄にそう言って、自分のそばを食べ始めた。


「そば好きなの?」


「ていうか、麺類が好きなんだよ、美味しいから」


「そうなんだ、ラーメンとかも?」


「うん、大好きだよ」


「へぇ、なんか意外だな」


 俺の勝手なイメージだが、清瀬さんはラーメンと言うよりもサンドイッチとかサラダとか食べてそうなイメージだった。


「そうかな? 私も色々な物食べるよ?」


「なんか、勝手なイメージだけどサラダだけで昼食を済ませてそうで」


「そんな訳ないじゃん、お腹減っちゃうよ」


「だよね」


 まぁ、そうだよね。

 でも、可愛い子は何をしていても絵になるな……。


「あぁ……うん! 本当に僕邪魔じゃない?」


「ん? なんでだよ?」


「いや、なんか二人の世界に入ってるみたいだし、それに僕はもう食べたから先に行ってるよ」


「え? あぁ……おう」


「じゃあ、ごゆっくり」


「栗原君、なんかごめんね」


「あぁ、大丈夫だよ」


 直晄はそう言ってトレーを持って、席から去って行った。

 清瀬さんと二人になってしまった……なんか緊張するな……。

 あ、そう言えば今日も一緒に帰れない事を言わないと……。


「そう言えば清瀬さん、今日の帰りなんだけど……」


「ん? どうかした?」


「ごめん、今日も一緒に帰れなくてさ……」


「え? また何か用事?」


「ま、まぁそんな感じ……ごめんね……」


「それって、藍原さんが関係してるの?」


「うっ! そ、そんな事無いよ……」


「目が泳いでるよ? 春山君って嘘が変だねぇ」


「いや……その……ごめん……」


 清瀬さんの気持ちを知っているだけに、正直言い出すことが出来なかったのだが……清瀬さんにはどうやらお見通しだったらしい。


「いいよ、謝らなくて、私は春山君の彼女って訳じゃ無いし」


「で、でも俺……清瀬さんの気持ちを知ってるから……言いにくくって……」


「大丈夫だよ、私が勝手に言ってるだけだから。でも一つ確認したいんだけど良い?」


「え? 何?」


「藍原さんとは本当に別れたんだよね?」


「え? うん……そうだけど」


「そっか、わかった。さ、早く食べないとお昼休み終わっちゃうよ!」


「お、おう……」


 清瀬さんはなんでそんな事を聞いてきたのだろうか?

 今日一緒に帰ると言ったから、気になったのだろうか?

 俺と清瀬さんは食事を終え、それぞれの教室に戻って行った。


「はぁ……美味かった」


「あ、おかえり」


「おう、ただいま」


 俺が教室に戻ると、直晄がクラスの他の男子達と話しをしていた。


「何話してたんだ?」


「おう、春山!」


「俺たち実はとある賭けをしていてな」


「賭け? 一体何を掛けてんだ?」


「お前のその怪我についてだ」


 怪我?

 この頭の何について賭けをしてるんだ?


「なんだよ、その賭けって」


「あぁ……お前のその怪我って……ぶっちゃけ藍原にやられたのか!?」


「はぁ?」


「いや、皆で掛けてたんだよ……お前に腹を立てた藍原がお前の頭をチョップでたたき割ったって言うのに掛けた奴と普通に転んで怪我したって言うのに掛けた奴が居るんだけど……ぶっちゃけどっちだ?」


「なんだよ……そのどうしようも無い賭け……」


「ちなみに藍原にやられたって言ってる奴らが9割だ」


「どんだけだよ!」


 なんで藍原が俺の頭を割るんだよ!

 そう言えば藍原の事もあって、こいつらにこの怪我の理由は説明して無かったな……。

 でも、昨日の事を説明するのも面倒だし……転んだって事にしとくか……。


「転んだんだよ……かってに人を賭けの対象にするな」


「なんだよぉ~10円負けたじゃんかぁ~」


「掛け金少ないなっ!!」


 そんな少額なら賭けなんかする必要ないだろ……いや、するのもあんま良くないけど……。


「みんな、藍原さんと湊斗の付き合ってた頃を知ってるからね……今回も藍原さんにやられたと思ったらしいよ?」


「まぁ……確かに仲悪い時期があったしな……」


 俺は直晄からそう言われ、なんとなくこいつらが俺の怪我を藍原のせいでは無いかと疑った理由に納得がいった。


「あ、んじゃついでにもう一個聞いていいか?」


「今度はなんだよ……」


「どうやってあの清瀬さんと仲良くなったんだ?」


「は? 清瀬さん?」


 藍原の次は清瀬さんの話しか……てか、なんでこいつらそんな質問してくるんだ?

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