第54話

 詳細は省くが、昼食を終えた後の俺達はたくさんのアトラクションを体験し、自分の世界の遊園地との格の違いをイヤというほど突き付けられた。

 

 そして俺達はテーマパークを後にし、そこら辺の居酒屋で晩飯を食べながら雑談を始めた。


 「どうだった?デリン・セラ城。すごかったでしょ。」


 「すごいどころじゃねーよ。なんちゅうクオリティだよ、あれ。」


 「そんな場所に連れて行ってあげたんだから、少しは感謝しなさいよね。」


 「は?俺達はお前のボディーガードなんだから、俺達を連れて行くのは当然だろ、なぁ、イーギ?」


 「間違いねーナ。」


 「図々しさならどのお偉いさんにも負けてないわよ、アンタ達・・・。」


 そう言ってため息を漏らしたクリプッセンと共に、俺達は居酒屋を後にした。


 今夜の宿を探しながら、クリプッセンは俺にある話題を振ってきた。


 「あ。そういえばアンタ、私に庶民の暮らしを教えてくれる、って言ってたわよね?具体的には何をさせる気なの?」


 「そうだな・・・。お前、お金って持ってる?」


 「持ってるわよ、ほら・・・え?」


 俺はクリプッセンが取り出した袋をサッと奪い、こう言ってやった。


 「よし。これでお前は晴れて一文無しになったわけだ。」


 「・・・は?」


 「これがお前が今持っている総所持金なんだろ?だからこれを俺達が預かれば、お前は無一文になるってことだ。分かったか?」


 「いや、何言ってるの?返しなさいよ、早く。」


 「え、やだ。返してほしかったら力ずくで取り返してみな。」


 「・・・あの時の砂浜で私にのされたの、忘れたのかしら?」


 そう言ってクリプッセンが怒りのオーラを見にまといながら近づいてきたので、俺はクリプッセンの金袋を持っていない方の手をかざし、目を閉じて


 「うーん・・・。」

 

 と言って頭の中でイメージを思い描いた。するとクリプッセンが少し動揺したように、


 「な、何をするつもりなの?」


 と言っていたが、すぐにもっと困惑して


 「う、嘘でしょ・・・。」


 と嘆いていた。よし、ビンゴだ。そう思って俺は目を開けた。目の前には小さな穴があった。


 俺が頭で思い描いたのは、クリプッセンがフードコートで見せたあの魔法だ。しかもちゃんと体験までした。まさかとは思ったが、俺の予測は正しかった。


 「ち、ちょっと・・・」


 とクリプッセンが止めに入ろうとしたが、もう遅かった。俺は


 「ふんっ!」


 と言って力みながらその穴にクリプッセンの袋をぶん投げた。そしてその穴を閉じてやった。


 「わ、私のお金が・・・。」


 と言って崩れ落ちるクリプッセンに、俺はこう言った。


 「これでお前は所持金ゼロってことになったが、それは今だけだ。」


 「え・・・?」


 「これからお前は、庶民の暮らしの基本を体験してもらう。その基本とはズバリ・・・労働だ!」

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