第52話
ゲートを出た俺達は、とりあえず昼食を食べられる場所を探すことにした。
「なあ、クリプッセン。お前、何が食いたいんだ?」
「決まってるわ。今まで食べたことがなかったものよ。」
そんな方針に従い、俺とイーギが
「この店とかどうだ?」
などと勧めても、クリプッセンが
「いや、それはもう食べたことがあるわ。」
「この店、なんか格式高いからホントに窮屈なのよね。・・・てかアンタ達、マナーとか知らないでしょ、ゼッタイ。」
などと言うので、なかなか決まらない。めんどくせーな、なんて思って店を探していると、
「あっ、あそこ!ほらほら!」
と言って、クリプッセンがある店に指を差した。どう見てもフードコートだった。
「え、せっかくここに来てこんなとこで食うのか?」
「当たり前よ!せっかく一人の客として来たんだから、一国の姫としては絶対に行けない場所で食べてみたいじゃない?」
「へー、そんなもんかぁ。」
俺はテキトーに相槌を打ちながら、クリプッセンに従うことにした。
「うわぁ・・・。これが庶民のフードコートなのね・・・。」
「バカにしてんのかコノヤロー。」
俺達はフードコートで席を確保し、椅子に腰を掛けながらクリプッセンのオーバーなリアクションに耐えている。
「何よ、別に感動しているだけじゃない。それに、人の感動を邪魔するなんてナンセンスじゃない?」
「ハァ・・・。」
「あ、そうそう。今日は私が誘ったんだから、何を食べるのかも私が決めてあげるわ。だから、アンタ達はそこで座ってなさい、いいわね?」
「はいはい・・・。」
そう言うと、クリプッセンは意気揚々に席を立ち、屋台の方に向かった。
クリプッセンがいなくなったので、俺はイーギにずっと気になっていたことを聞いた。
「なあ。クリプッセンってあれでも一国の姫気味なんだよな?どうして大した護衛もつけずに外遊なんてさせるもんなのか?」
「アァ、そういやそうだナ。確かにお前の下界じゃ考えられないもんナ。」
そう言うと、イーギはちょっとした説明を始めた。
「いいか?この下界じゃけっこう変わった能力主義的な考えがはびこってるんダ。お前の下界だったら、王族が外を出歩こうものなら、スッゲー警備が敷かれるダロ?」
「そうだな。」
「だからその国がすごいってアピールになるが、こんな考え方もできちまうんじゃないか?外で襲撃されるような人がトップであるような国なんて、誰が住みたいんダ、ってな。」
「ほうほう・・・。」
「この下界じゃそんな考えが根っこにあるかラ、王族が一人で自由に出歩くことがその国の強さをアピールすることになってンダ。それであの姫は一人でシノアに来たってことサ。」
「へえ・・・。」
「・・・お前、自分から聞いてきた割にはリアクション薄くねーカ?」
「いや、変だったらそれなりに理由があれば何でもよかったから、理由があってよかったなー、って。それだけだな。」
「マジでそれだケ?」
「うん。どうせ俺、ここで国を作るわけじゃないし。」
「お前、訳分からんトコで急にドライになるよナ・・・。」
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