第51話
クリプッセンの腹の音を聞いたので、俺達は最初のアトラクションから抜けて昼食を食べることにした。
「・・・なあ。ここ、どうやって抜け出せばいいんだ?」
世界の狭間とかいう、今でも訳の分からない空間に入っている状況を再認識し、俺はここから戻れないんじゃないかとすごく不安になってきた。太陽が照りつける雲一つない青空の下でこんな青ざめた気分になるなんて想像もしなかった。
すると、クリプッセンがさも当たり前のようにこう返してきた。
「簡単よ。私達の元いる世界を意識すればいいの。」
そしたら俺、あなたから見た異世界に戻っちゃうんだけど?
そんな疑問を口に出せずにいると、イーギが
「そんなこと急に言われてモ、俺達にはできっこねーワ。だからサ、お前と一緒に俺達も戻してくんねえカ?」
とナイスな提案を持ちかけてきた。すると、
「言われてみれば確かにそうね。いいわよ、任せなさい。」
とクリプッセンが了解したので、俺はイーギに乗っかることにした。
「さ、シイマ。私の手を握って。」
そう言われたので、俺はクリプッセンが出してきた左手を右手で掴むと、
「ほら、イーギも私の手を握りなさい。」
と言い、クリプッセンはイーギに自分の右手を掴ませた。イーギが掴んだことを確認すると、クリプッセンは、
「じゃあ、飛ぶわよ。」
と言い、目を閉じた。
すると次の瞬間、とんでもないことが起こりだした。目の前に見える風景が細かい粒となって散らばりだし、光の球がチラホラと浮いた真っ暗な空間を作り出した。
俺は何が起こったのか分からずに周りを見渡していると、前方に大きな光が近づいてきているのが分かった。
少しして気がついた。俺達がその光に向かっているのだ。正面にあるあの光に引っ張られていたのだ。
「う、うおおおっ!?」
そんなうろたえ方をした俺はまぶしさと怖さのあまり、左腕で顔を隠して目を閉じた。ほんの少しの間だった。
俺は周囲がまぶしくなくなったことを確認し、おそるおそる目を開けてみると、いつの間にかさっきの世界に戻っていた。顔を動かして、背後に例の馬鹿でかい門があることを確認した。
「さ、戻ったわよ。・・・って、どうしたの?」
「い、いやぁ・・・。」
今になってスケールのデカさを理解し始めた俺は、足が震えていた。
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