第39話

 「や、やったか・・・?」


 私は最後の一手は、爆発魔法だった。これを人に向けて放ったのも、自分を巻き込んで放ったのも初めてだ。


 だから、誤算もあった。爆発の耐性が弱く、私は予想以上にダメージを負った。飲み込む唾がないほどに、体が蒸発していた。だがそれは、向こうにとっても同じはずだ。


 そう思い、私は顔を上げた。すると、目の前に男が立っていた。おかしなことに、爆発に巻き込まれた様子に見えなかった。


 いや、爆発に巻き込まれたはずだ。私が掴み、放さなかった。ではなぜ、コイツは無事なんだ?・・・ま、まさか!?


 「いやぁ、勝負は時の運って言葉が身に染みたの、大学受験以来だな。」


 「・・・貴様、爆発に耐性があったな?」


 「ああ、ご名答だ。もしお前がまた別のワケ分からんものをパナしてたら結果が変わってたかもな。人生、何がどこで役立つか分からねーもんだな。」


 私はその言葉を聞いた後、背中を天に向けて倒れた。 




 急にガキが倒れたので、俺はガキの下に近寄り、治癒魔法を使うことにした。死なれては色々と困るからだ。


 近くでガキを見て初めて分かったが、コイツ、体中が焦げている。しかも、手をかざしてみると熱を感じた。これ、けっこーヤバいんじゃないか・・・?


 そう思った俺は、イーギにやった時よりも魔力を込めて治癒魔法を施した。すると光が出てガキを包みだし、ガキがふわっと浮き出した。様子を見てみると、ガキの肌が元通りに戻ってきた。呼吸もしていた。


 しばらくするとガキが目覚めた。それを確認し、俺は魔法をやめた。


 ガキはムクリと起き上がり、俺に語り掛けてきた。


 「・・・貴様が、私を治したのか。どこまでも、底が見えない男だ。」


 「流石に買いかぶりすぎだ。手札はもうねぇよ。」

 

 考えてみたら、これでガキがまた襲い掛かってくるなんてことがあるんじゃねーか、なんて思って少しソワソワしていると、


 「最後に、一つ聞きたい。私がから感じていたものは何だったんだ?」


 「貴様、ら?・・・ああ、そーいうことか。そんなことも知らないとは、これだからガキって・・・。」


 「もったいぶるな。さっさと言え。」


 「闘志だよ。お前を倒す、っていう意思を強く持つとそうなるんだよ。俺にはそれがあって、お前にはそれがなかった。それだけだ。」


 「闘志、か・・・。」


 そう言うと、ガキは仰向けになり、突然笑い出した。そして、


 「貴様、名前は何だったか?」


 と聞いてきたので、


 「シイマだよ。あと、貴様呼びは止めてくんねーか?なんかムズムズするんだけど。」


 と答えると、


 「シイマ、私の負けだ。」


 と言った。これで、決勝戦は幕を閉じた。

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