第37話

 壁にこもって作戦を考えてみたが、作戦が通用しなかったショックもあり、そう簡単に思いつきはしなかった。


 そこで、俺はなぜガキがこんなに強いのかを自分なりに考えることにした。するとその瞬間、あることが閃いた。


 俺は土の中にいた時と同じように両腕を前に出し、魔力を集中させた。違うのは、右手を銃の形に見立て、中指の先の一点に魔力を込めたことだ。


 そして力を入れた瞬間、魔力は性質を変え、光りだした。


 成功だ。やっぱりガキが作ったあのバカみたいに硬かった球は、魔力で土を凝縮させたものだ。だったら、土を雷に置き換えてもできるんじゃねーのかと思っていたが、ビンゴだ。


 しかし魔力を込めすぎたせいか、この雷の弾、グニョグニョと歪に形を変えている。これ、暴発したらヤバくねーか・・・?


 そう思った俺は、穴の先目掛けて標準を定めて構えを取り、さっさとこの弾をぶっぱなした。


 弾は元の大きさを保ったまま、フワフワと前に進んでいる。あまりにも遅いんだけど。これホントに大丈夫か?


 しかし弾が穴の外を出てゴーレムの足元に当たった瞬間、爆音と穴の奥にいた俺も目が開けられないほどの閃光が走った。


 目の前が眩しくなくなったので目を開けてみると、穴の先にゴーレムがいないことが分かった。


 勢い余ってガキごと消してしまったんじゃないかと思い、おそるおそる外に出てみると、どっかのモビルスーツみたいにゴーレムの上半身が宙に浮いていた。地獄行きは免れた。


 よかったと思い安心しきっていると、ゴーレムの上半身が形を変え、全身の形を取り戻した。大きさはちょうど鎧をまとったガキと同じだった。


 俺は首を回してコキリコキリと音を立てて、グチを漏らした。


 「お前さぁ、巨体ほど遅いとか、かえって弱くなるとか、そーいうお約束を守ってくんねーかな?」


 するとガキは何の返事もせず、腰をかがめた。


 「・・・あっそ。可愛げがねーなぁ。」


 ガキがそのつもりなので、俺も構えを取った。ファイナルラウンドが始まろうとしていた。

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