第36話

 作戦が思いついたので、とりあえず突撃することにした。


 俺は腰をかがめて両手をつき、クラウチングスタートの姿勢を取った。そして心を落ち着かせ、脱力をした。


 それから俺は一気に力を込め、スタートを切った。スライムの時よりも速さが段違いだった。俺はその勢いのまま、腕を前に置いて、目を閉じながらゴーレムの右足に突っ込んだ。


 衝撃が走った後に目を開けると、俺はゴーレムの足の向こう側の光景が見えていた。ブチカマシ対決は、俺の勝ちだった。


 ゴーレムに激突した俺は減速して立ち止まり、ゴーレムの方を振り返った。ゴーレムも俺に向き直してきた。よく見ると、さっき貫いたゴーレムの足元の穴が茶色で埋まっていき、灼熱色になって元通りになった。


 「なんだよコイツ。デタラメなのもいい加減にしろよな・・・。」


 そう嘆いていると、ゴーレムが先ほどのパンチと同じようなスピードで俺に襲い掛かってきた。流石に分が悪すぎるので、俺は横にずれて逃げた。流石に方向転換はムリだろ。


 なんて思っているとゴーレムが俺の動きに合わせて横ステップをし、瞬時に方向転換をしてきやがった。地面が揺れていた。これ何かのバグだろ絶対。


 バグゴーレムは俺に追いつき、俺に蹴りを放ってきた。俺はとっさにもう一方の足に向かい、そこからバグゴーレムをよじ登った。固体だからだろうか、火球の時よりも熱かった。


 バグゴーレムの上半身にたどり着いたところで、体にこびりついた俺を振り払おうとバグゴーレムが体をグルングルンと回しだした。俺は負けじとがっしりとしがみついた。


 しばらくすると回転が終わり、バグゴーレムの右手が俺を叩き潰そうとして迫ってきた。よし、今だ!


 すかさず俺はバグゴーレムから離れ、叩き潰しを逃れた。バグゴーレムの右手は自分の胸のあたりを叩き、その勢いで右手が少し上半身に埋まった。当たりだ。自滅は狙える。


 しかし、そう思ったのもつかの間だった。バグゴーレムが右手を胸のあたりから離すと、そこから新しい肉体が盛り上がってきて、結局元通りに戻った。


 こいつの打開策が無意味だと知った俺は、すかさず走り、さっきの壁の中に戻った。敗走じゃないと、自分の中で言い聞かせた。

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