第34話

 俺とガキに少しの間静寂が続いたが、先に口を割ったのはガキの方だった。


 「・・・誉めてやろう。私を騙し、この顔面に一撃を与えるとは、よくやった。」


 騙し通す、ということにピンとこなかったが、すぐに気がついた。炎魔法に耐性がつき、いつの間にか使えるようになったことだ。経験強化のチートがタネだが、都合のいいように捉えてくれたのでそこはそうっとしておこう。


 「だが、もう十分だろう。お前のことは、もう分かった。決着をつけよう。」


 そう言うと、闘技場の地面の土が柱を作るように舞い上がりだした。そしてその柱が、ガキの周りを取り囲み、一つの球の輪郭を作り出した。


 何かヤバい予感がした俺は、浮いているガキ目掛けて突撃し、右ストレートを放った。その瞬間、ガキを取り囲む土が球を作り、ガキの姿が見えなくなった。


 ガキのように空中で静止することのできない俺は、そのまま球にパンチをぶつけた。ぶつけた途端、全身に衝撃が走った。体中が嫌な感じでビリビリする。それでも、土でできた球は傷一つ見せなかった。


 俺はそのまま地面に落下し、体中のビリビリを必死に我慢していた。すると俺の立っている地面が急に浮きだした。


 ヤバいと思った俺は、今いる地面から離れた。すると今いる地面も浮きだしたので、俺はガキから距離を置くことにし、闘技場の壁際まで離れた。


 ここから見えた光景は、まさに天変地異そのものだった。地面から大なり小なりの土塊が飛び出し、ガキを包む球をより一層大きくしている。前に見たレソの家よりも一回りは大きいサイズになっていた。


 「うおっ、スゲェ・・・。」


 俺は思わず、こうつぶやいていた。当たり前だ。だって、地面が割れて、宙に浮きだしているんだぞ?今まで浮くことのなかったものが、枷が外れたかのように動き出したんだぞ?こんな光景を見て、興奮しない人間などいようものか。


 「ハハッ、ハハハハハ・・・。」


 俺はこのとき、大笑いしてしまった。ほっぺたをつねった。痛かった。

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