第8話
思ったより簡単だったので、イーギの治癒はすぐに終わった。次はイーギの番だが、ベッドに倒れる以外にやることがなかったので、イーギに話しかけることにした。
「あの受付嬢、なかなかエロかったな。」
「ああ。なかなかいいフェロモンしてたゼ。」
「なんか想像するだけで興奮してきたな。・・・そういやお前の本当の姿って、あんな感じなんだな。」
「ま、お前達からすればそうなるかもナ。って言っても、俺達に本当の姿なんて定義はないけどナ。だからこれが本当の姿って思えバ、それでいいんじゃねえかってことになるんだヨ。」
「じゃあ、お前にとってはあれが本当の姿なのか?」
「今んところはナ。」
こいつ、変身できるのか。
「・・・イーギ、お前、別の人間の姿になれたりするのか?」
「なれるが、それがどうかしたのカ?」
「巨乳で黒髪の女になってくんない?あの受付嬢のことを想像してきたら、ちょっとムラムラしてきたんだよ。ただ、おっぱいを揉みたいだけなんだよ。」
そう。別にそーゆうコトをしたいわけじゃない。第一、こいつは悪魔だ。そんなコトしようものなら、異世界に来て一日足らずで死ぬことになりそうだ。てか、悪魔相手にそんな考えを持つほど、俺はバカじゃない。大丈夫だ、問題ない。
「お前、やっぱ面白いナ。任せロ。」
すると、イーギの体つきが変わりだし、髪の毛も長髪になっていった。そして、
「どうダ?満足カ?」
と言って、俺にそのボディを見せつけてきた。シジーヌにもらった服の張り具合からわかる胸、華奢で色白の手、魅惑する声。顔に至っては、絶世の美女という言葉そのものを体現しているとしか思えなかった。
俺はいつの間にか、固まった表情のまま涙を流していた。同時に、欲情が荒ぶっているのを感じた。そうか。性欲と美が振り切れると、人間はこうなるんだ。
俺が変身するト、シイマは固まり、しばらくすると涙を流し始めタ。
「アハハ!涙出てるゼ!」
と言っているト、
「・・・俺は正直、その胸を揉んだりするだけで満足できると思っていた。けどもう無理だ。」
シイマの様子がおかしイ。なんか不気味なオーラとか出てんだけド。
「な、なにをするつもりダ・・・?」
するとシイマは腰をかがめテ、
「抱かせろおおおおおお!」
と言イ、悪質なタックルを仕掛け、俺を押し倒してきやがッタ。なんてパワーだヨ!
「やめロ!落ち着ケ!俺、悪魔だゼ!?」
この時点ですでに俺は声を戻していたガ、シイマには無意味だったらしイ。シイマは腕を伸ばシ、
「へえ、これが、胸、かあ・・・。」
と言いながラ、俺の胸を揉みだしタ。
「怖イ!怖イ!」
そう言うト、俺はシイマの揉んでいるほうの腕をつかみ、そして投げタ。そして瞬時に元の男の姿に戻っタ。
「ハァ、ハァ・・・。お前、出してるオーラが狂気すぎるワ!並の悪魔でもそうそう出せねえレベルのヤツだぞオイ!イカレてるだろ、オメー!」
「イカ レテ ル・・・?」
「そりゃそーダロ!悪魔を抱こうとして襲う奴なんて、前代未聞だワ!」
「ナニ ソレ・・・?」
「なんか知性も失い始めてるシ!てかもう俺はあの姿じゃないシ!もういいダロ!」
「モトニモドレエエエエエエエエ!」
「こっちのセリフじゃアァァ!」
こうして俺は、本日2度目のモンスター戦を行う羽目になっタ。ほんとに戻るよな、コイツ・・・?
俺が目を覚ましたときには、大陽が昇っていた。ベッドはグチャグチャで、しかも俺は床で寝ていたらしい。というか、いつから俺は寝ていたんだ?
「たしか俺は、イーギの女の姿を見て・・・。」
と昨日の出来事を振り返りながらあたりを見回すと、イーギが悪魔の姿のまま寝ていた。
「おい、朝だぞ。さっさと人間の姿になれ。」
そういってイーギを起こすと、
「・・・ハッ!?まだやる気カ?」
と言い、俺から距離を取った。
「いや、何のやる気かは知らねえけど、もう朝だぞ。」
と答えてやると、
「よ、よかったァ・・・。」
とイーギが安堵した。
「何があったんだ?」
「昨日の晩、俺が女に変身したロ?そしたら、お前が襲い掛かってきたんだヨ。」
「まさか、そんなこと・・・。」
と笑って受け流すと、
「ヤバかったんだヨ!貞操の危機って言葉が、常に頭に残ってたワ!それでお前を動けないように押さえつけるために、この姿になってたんダ。そしたら、お前が気を失っているのを確認して、俺はそのまま寝ちまったんだヨ。」
と俺に訴えかけた。
「ああ、そう。」
「めっちゃ怖かったんだヨ!少しは反応を示セ!」
「うるせえな、近所に迷惑だろ。イーギ、少しは静かにしろ。」
「昨日のお前よりは静かダワ!てか、信じてないようだナ。」
「そりゃそうだろ。だいたい、俺が自分から悪魔を襲うわけねえだろ。」
「・・・冒険者免許でステータスを確認してみロ。」
とイーギに言われ、自分のステータスを見てみると、
「なんだこれ。ステータスが前より上がってるぞ。なんでだ?」
「俺を襲ったからダヨ!」
俺達は宿主のおっさんにお礼を言うため、部屋を片付けしてから受付に向かった。
やはり受付には誰もいなかったので、昨日のように板を鳴らすと、
「ああ、君たちか。」
といい、宿主のおっさんがあくびをしながらやってきた。
「泊めてくれてありがとな。」
と礼を言うと、
「ああ、何というか、その・・・。ゆうべはお楽しみだったな。」
と訳の分からないことを言われ、俺達は宿を出た。
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