第94話 何事もほどほどに 2

松本さんの強い口調には少しビックリした。

普段は、すごく優しい口調でしゃべってくるから、余計に。

やっぱり、何でも分かってしまうんだな~と、感心させられた。


前の入院の時、筋力の低下が激しかったのもあるけど、ただ休んでいる時間がもったいなく感じて、痛みがありながらも無理をしていた。

時間は止まってくれない。

早く治って社会復帰したい。

一恵の為にも・・・・と思ったことが、まさか裏目に出ていたなんて・・・・


こんな事を思っている中、松本さんは病室のイスに座りだした。


「松本さん、次のリハビリには行かなくていいの?」


「この1時間は、横井さんの時間だから行かなくてもいいの。あと、上司からも横井さんに、きつくお灸を添えて来いって言われてるから(笑)」


「え~~~~。マジですか?」


「マジです(笑)」


こうやって1時間の間、松本さんとの会話が始まった。

リハビリ中にも少しは話はするけど、こんなにゆっくり話すこともないから、何だか少し緊張していた。


「スクワットの他に変わったことはしていない?」


「あとは~、腹筋ぐらいですよ」


「スクワットだって、片足でしているんでしょ!そんなの痛みが引くわけないじゃないですか・・・・・・・ブツブツブツ・・・・・・・」


うわ・・・やばい・・・説教がはじまった。

何か話の話題を変えないと、いつまでもブツブツ言われると思い、松本さんのプライベートな話に持っていこうとした。


「ま・・・松本さん、彼氏とはうまくいってるの?」


「え??どうしたの急に(笑)」


「ちょっと気になって・・・」


「あ~~~!話をそらそうとしてるでしょ!(笑)」


すべてお見通しである・・・・


「まっ、いっか(笑)そうね~~うまくいってると言うか、最近は色々引っかかる所が多くなってきたかな~」


「もし良ければ教えてくれませんか?」


そう言って、普段あまり話さない、プライベートを聞くことに成功した。


「一番問題なのは、仕事が長続きしない事なのよ~。グチばっかり言ってすぐに辞めるのがちょっとね~。

どんな仕事にだって、嫌な面は絶対にあるから気持ちは分からなくないけど、すぐに諦めてしまう所が好きになれなくてね~」


「なるほど」


「付き合って2年くらいになるけど、段々性格が見えてきたら、こんな人だなんて思わなかったよ~。本当に人付き合いって難しいよね~」


松本さんでも、そんな風に思うんだな!と、俺だけじゃないとわかった時、なんだかすごく安心感が沸いてくるようだった。


「私も横井さんみたいな人と付き合えばよかったのにな~~」


「は???」


「すごく人の事を考えてくれるし、頑張り屋さんだし。彼女さんがうらやましいよ~」


「またまた~~。そんなに褒めても何も出ませんよ~(笑)」


「私は本気で、そう思ってるよ~。お世辞じゃなくてね!」


・・・・何なんだ・・・・本当に今が、人生のモテ期なんじゃないのか?

以外過ぎる言葉に戸惑いを隠せなかった。

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