第95話 何事もほどほどに 3

3日間、リハビリは中止になって、松本さんが監視でその時間にやってくる。

監視と言っても、プライベートな話だったりをしていて、楽しい時間だった。


「そう言えば、私、横井さんの彼女さん、見かけた事ありますよ~」


「あ!そうなんですか~」


「すごく可愛い彼女だよね!(話をした事は内緒にしておこう!)」


「そうなんですよ~。俺には勿体ないくらいで!」


「そんな事ないですよ~。頑張り屋さんの横井さんにピッタリ!」



一恵もやりたい事を一生懸命目指していて凄いと思うけど、松本さんもやりたかった仕事に就き、一所懸命やっていてかなり凄い。

俺はと言えば、やりたい事が見つからず、やれる事をやってるだけで、二人とは全然違う。

目標に向かって頑張る事って、簡単そうでかなり難しい事だと思う。

何度も壁にぶち当たるだろうし、挫折だって考えるだろうし。

たとえ目標を達成しても、それが自分に合っているのか分からない訳だし・・・・

考えれば考えるほど人生って難しいもんだ。



リハビリも再開し、ほどほどに頑張りながら、10月の半ばに入った頃。

ほぼ毎日のように、お見舞い(介護)に来てくれる一恵は、少し寂しそうにしていた。


「今年も一緒に、学園祭を楽しみたかったな~。でも仕方がないよね・・・・

回復は順調にいってる?直樹~」


「少し回復は遅れてるみたいだけど、大丈夫だよ!」


去年の学園祭で噂が広まったから、俺は正直、行かなくて正解だったかも?と思っていた。

一部の人間しか信用できないこの心は、そう簡単には変われない。

また一恵に、迷惑を掛けてしまう可能性があるなら、行かなくて正解である。

今はとにかく、ケガの回復だけを考えて行こうと、早い社会復帰をめざしていた。


退院したのは、もう外が肌寒い、雪がちらつく12月半ばくらいの事だった。

退院したからと言って、前から続いている、左手のしびれは取れておらず、足の方も無理に走ったりしたら、まだ痛い状態だった。

それでも、クリスマスや二人の誕生日までには間に合ったことに、自分の中では

ホッっと胸を撫でおろした。


次の誕生日で18歳になり、念願だった車の免許も所得できる。

車の免許が取れる事で、何だろう、少し大人になった気分になるのは自分だけなのだろうか?

とにかく、行動範囲は広まるわけだし、何か違う未来が待っているような感じで、すごく楽しみにしていた。

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