第91話 好きな人だけには変わらなきゃ 3

「そっか~。子供の時の忘れられない思いって、どれだけ月日が経っても薄れないよね。私にはそんな出来事はなかったけど、もしあったら・・直樹と同じだったかも」


「わかってくれる?」


「うん。ちょっとした事でも、敏感に反応して、悪いほうに考えてしまう。その悪い出来事に、軽く洗脳させられてるんだよね・・・やっぱり。それで大人になっても引きずっていく。子供の時の経験って、それだけ重要だよね!」


「一恵はどんな子供だったの?」


「私は、おとなしくて何も言えない子供時代だったかな。言いたい事が言えないから、段々蓄積されていって、ストレスを感じていた・・・・暗い子だったよ・・」


「でも、今はそんな事ないでしょ!」


「慣れていくのに時間が少し掛かるけど、仲良くなったら普通に話せるようにはなったかな。直樹の事は、大好きな人だから、変わらなきゃって・・・・・す・・・・・少しだけだよ・・・・努力したかな・・・・♡」


いきなりそんな事を言われたから、二人近くで見つめ合っていた視線が急に恥ずかしくなり、思わず外してしまった。


「・・・それでね・・・直樹にちょっと相談って言うか、悩みを聞いてほしいんだけど、いい?」


「俺なんかでよければ、何でも聞くよ」


そう言って一恵は、深く深呼吸をしてから話始めた。


「今回の直樹の入院で、すごく悩んでることがあって・・・私、大学を諦めて就職しよかなって・・・」


「え??」


「直樹知ってる?18歳になったら私たち結婚できるんだよ~♡」


「そ・・・・それくらいは知ってるけど・・・・どうしたの急に・・・」


彼女の瞳が徐々に潤んできているのに気づいた。


「今回も運がよくて助かってるけど・・・・・・もしこのまま直樹が居なくなったらと思ったら・・・・・少しでも側にいたい・・・だって愛してるんだもん・・・」


一恵の言葉に、うれしさよりも、驚きを隠せなかった。

俺の事で、自分の夢を諦めようとしている・・・・

それだけは絶対にあってはならない。

必ず後悔すると俺は思った。俺が進学を後悔したように。



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