第87話 若い女性には弱い

身動きが出来ない入院生活ほど、辛く、暇な事はない。

やる事と言ったら、寝る事くらいだけど、そんなには寝れない。

アプリゲームをしてる人なら、天国なんだろうな・・・・

そんな事を思いながら、数日が過ぎた。


楽しみと言ったら、一恵がお見舞いに来てくれることぐらいだろうか。

そんな中、事故の加害者が病室に訪れてきた。


コンコン


「失礼します」


「どちら様でしょうか?」


「すみません。渡辺早苗と申します。この度は、本当に申し訳ありませんでした」


見るからに、20歳くらいの若そうな女性だった。

男ってやつはどうして若い女性に弱いのか・・・・・・

加害者が現れたら、文句の2つや3つ言おうと思ってたのに、こんな若い女性だったとは・・・・・


「あの、失礼ですけど、かなり若いですよね」


「すいません・・・・免許取りたての初心者でして・・・」


「18歳ってこと?」


「はい・・・・・大学1年生です」


「どうしてあんな所に突っ込んできたの?」


「すいません・・・・スマホをさわってまして・・・・・本当に申し訳ありません」


相手が若い女性以外なら、もっとキツイ言葉を言ってただろうに、そこまで言えなかった。


「明日からは、毎日、お見舞いに来ます・・・・・本当に申し訳ありません」


「毎日来られても・・・・」


「いえ、償いにならないでしょうけど、私には、そんな事しか出来ないですし・・」


「ま・・・まぁ、俺からも、今度からは気を付けてって事しか言えないけど」


「本当に申し訳ありません・・・・・今日はこれで失礼させてもらいます」


そう言って、今日の所は帰っていった。

あそこまでペコペコされたら、何も言えなかった。

悪い事をしたって事が伝わってきたから、キツイ言葉を言わなかったって事にしておこう・・・・・・・なんて弱いんだ、俺は・・・・・


それから毎日、お詫びの言葉と、一輪の花を持ってきてる。

これが、若い女性以外なら、「もう二度と来るな!!顔も見たくない!!」

なんてこと言ってるだろうに・・・・・・弱い自分は、何も言えずにいた。

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