第79話 最後に告白します!

いつも通りに出勤。いつも通りに昼食。いつも通りに接客。

ただ、それも今日で終わる、7月31日。

職場の人間関係も良く、仕事も楽しかった。なのに終わりが来る。


次の仕事を探す暇もなく、8月からは、またハローワークに行かなければならない。

すんなり仕事が決まってくれればいいが、前回同様、期待は持てない。

俺は、頭をかかえていた。


最後の日も、田口さんがバイトに来ていて、二人は早めに上がっていいと、店長に言われて、最後の仕事を終えた。


「先輩、ちょっとコーヒータイム付き合ってくれませんか?」


「え?あぁ、いいよ」


「とは言っても、近くの自販ですけどね(笑)」


そう言って、店を出て、近くの自販で二人で話していた。


「先輩、終わっちゃいましたね・・・・・・」


「そうだな・・・・田口さんは、またどこかでバイトするの?」


「いや、しません。勉強にでも専念しますよ(笑)」


「そっか~」


「これ以上のバイトなんて、たぶん見つからないから・・・・・・」


「みんな頑張ってたよな!」


「頑張ってました!でもこんな終わり方もあるんですね・・・・いい社会勉強になりました」


「俺、田口さんにお礼言わなきゃ。身体の事も気遣ってくれてありがとう!!」


「先輩のお役に立ててよかったです!(ニコッ)」


「そう言えば、恋愛の方はどう?何か進展あった?」


「何もないですよ~~。告っても無いから~~(笑)」


「告らないと、何も始まらないぞ~~」


「そうですよね・・・・・今日で最後だから、先輩に言います!」



田口さんは、スゥ~と深呼吸して、すべてを語りだした。



「先輩、何も言わず聞いてくださいね!私の好きな人は先輩です!!!!

だから告る事なんて出来なかった。迷惑をかけちゃうから、先輩に。

かなわない恋だとわかってたけど、だんだん好きになっちゃった・・・・・

本当は連絡先とか聞きたいけど、あえて聞きません。

諦められなくなっちゃうから・・・・・・

でも、どこかで見かけたら、声くらい掛けてくださいね!!(笑)

仕事も、恋も先輩から教わりました・・・・・・・・・

だから・・・・・お礼を言いたいです・・・・・ありがとうございました・・・」


最後の方になって、田口さんの瞳から、涙がこぼれていた。


「あ・・・・・・え・・・・・えっと~~~・・・・」


俺の方は、びっくりして声が出なかった。

好意を持ってた事はわかっていたが、恋愛対象になっていたなんて・・・・・・

すごく酷い事ばっかり言ってた自分に気が付いた。


「ゴメン・・・・・田口さん。俺って、ひどい事ばっかり言ってたよね・・・・・」


「本当に~~~~!!!鈍感な先輩なんだから~~~(笑)

でも、そんな所も大好きでした!!」


「本当に、何て言っていいやら・・・・申し訳ない・・・・・」


「いいんですよ~~~。私が勝手に好きになったんだから。

でも、本当に楽しい1年間を過ごせました!!先輩のお蔭です!!」


「田口さんならきっと、いい彼氏できると思うよ!俺が言っても説得力ないか」


「先輩の彼女さんもきっと、同じ高校生を好きになれないんじゃないのかな。

やっぱり、社会に出て頑張ってる先輩みたいな人って、なかなかいないから。

私も、同じ高校生見てたら、子供に見えてしまって、恋愛感情が沸かないんです」


「いや、ただ勉強できないクソ野郎だけど、俺は・・・」


「先輩!!!見てる人はちゃんと見てますよ!!!自信もって!!!」


「そうなんだろうか?・・・・・・」


田口さんの方が、俺から見たら、しっかりした大人に見えた。

俺は、優柔不断で、すぐに考え込んで・・・・・・・本当のガキだ。


「それじゃ~先輩。私、帰りますね・・・・・・・・

ちゃんと、身体を大事にしてくださいね!!!

サヨナラは言いません・・・・・・それじゃ~またね~~先輩!!!」



そう言って田口さんは走って帰っていった。

俺の方は、友達ばかりだと思っていたから、一恵ちゃんの事で相談したりしていた事は、田口さんにとっては本当に辛かったと思う。

でも、簡単に、女心なんてわかんない・・・・・・難しいな・・・・人って・・・

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