第78話 ため息と焦り

従業員みんなが、ため息ばかりついている。

そりゃそうだろう。あと半月もすれば、仕事を辞めないといけないのだから。

俺も、一恵ちゃんに言うタイミングがわからない・・・・・と言うか、次の仕事を見つけなければ・・・・・その焦りでいっぱいになっていた。


明日の土曜日に、デートの約束をしているから、その時に言おうと思っていた矢先、

一恵ちゃんが、店の方に現れた。


「直樹君、お仕事ご苦労様~!!」


「一恵ちゃん・・・・買い物に来たのかな?」


「うんうん。絵の具の補充でね~。

それより、店の前に張り紙してあったけど、8月から改装するの?」


「あぁ~~・・・その事で、明日話そうと思ってたんだけど・・・・・」


「そっか。じゃ~明日聞くね。ごめんね、お仕事中なのに」


「大丈夫だよ。それじゃ~明日、駅前で待ってるよ!」


「うん!!私の方が待ってるから(ニコッ)♡♡♡」


俺の元気なさそうな声で、もしかしたら感づかれたかもしれない。

一恵ちゃんは俺の事、よく見てるからなぁ~。


そう思いながら、土曜のデートの日がやってきた。

彼女の言う通り、俺より先に、待ち合わせ場所で待っていた。


「直樹く~~~ん♡♡♡」


いつもながらに、まぶしい笑顔で俺に手を振っていた。


「早いね、一恵ちゃん!」


「ほら、私の方が先に待ってたでしょ~~♡」


「うむ~。俺でも30分前に来たのに・・・・負けた・・・・」


「ふふふ。とりあえず、お昼食べながら、話を聞こっかな」


二人は、ショッピングモール内の店に入っていった。


「直樹君のテンションだと、私、何か嫌な事しか思いつかない・・・・・」


「店の張り紙の通り、8月から改装するんだけど、経営者が変わってね。

それで、今の従業員はお役ゴメンってわけ・・・・・・」


「そんな・・・・みんな頑張ってたよね。私もたまに顔出すから知ってる。

直樹くんも頑張ってた事、私、知ってるもん・・・・・・・・なんで・・・・」


一恵ちゃんは、俺の事で泣いてくれた・・なんて思いやりのある彼女なんだ!!!


「どんなに頑張っても、ダメなものはダメって事、俺はよくわかってる。報われるのは、ほんの一握り。それでも頑張る事しかできないんだよね・・・・・・・」


「私・・・・・・社会に出るのが怖くなっちゃった・・・・・・」


「正直、俺もどうしたらいいのかわからない・・・・・・・

だけど、一恵ちゃんがいてくれると、心が和む・・・・ありがとう!!」


「私・・・・・何もしてないよ??・・・・・・」


「俺なんかの為に泣いてくれるし、考えてくれる。それだけで十分だよ!!!」


「直樹君・・・・・私はずっと、そばにいたい・・・離さないでね・・・♡♡♡」




二人の仲は、さらに深まったのはいいが、俺も社会に対して不安と怖さでいっぱいになっていた。


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