第76話 本命のバレンタイン(後編)

2月14日の夕方に、久しぶりに、あの場所で一恵ちゃんと逢う約束をした。

二人が付き合いだして、初めてこの場所に来た。

そう言えば、前の会社の帰り道だったんだよな~。すごく昔に感じられる。


今思えば、前の会社は酷かった。

どこの会社も、人手不足だから仕方がないが、だったら、もっと上の奴らが仕事すべきだ!!高い給料もらって、口しか出さない・・・・・・

その点、今の職場は、みんなでカバーし合って、まとまりがあるように感じる。


懐かし事を思い出しながら、一恵ちゃんが来るのを待っていた。


「直樹君~~~!!おまたせ~~~~♡♡♡」


手を振りながら、まぶしい笑顔で走ってきた。


「はぁはぁはぁ・・・・・・・ここに来るのも久しぶりだね~」


「そうだよね。俺たちが付き合って以来だもんね」


「お互いに忙しくて仕方がないけど、やっぱりこの場所はいいよね!落ち着く♡」


「二人の思い出の場所だからね」


ゴソゴソ と一恵ちゃんは、カバンから何かを取り出した。


「ジャ~~~ン!!!手作りで作ったんだよ~~~食べさせてあげるね♡♡♡」


「おお~~~!!すごく旨そう~~~!!」


「はい♡♡♡あ~~~んして♡♡♡」


「あ~~~~~ん・・・・・・モグモグ・・・・・」


「どうかな?」


「これは・・・・・間違いないヤツだ!!!!旨い!!!!」


「フフフ。直樹君、いつも褒めてくれる。まずかったら、ちゃんと言ってね」


「お世辞なんて言わないよ~~!!マジで旨いから!!!」


「ありがとう♡♡♡」


二人が付き合いだした、思い出の場所で、なんの恥じらいもなく、イチャつける。

こんなに幸せでいいんだ・・・・と、今はポジティブに考えるようになっていた。


「ほら。ここで並んで座ってるって、私の描いた風景画と同じだね♡♡♡」


「本当だ!!風景画が現実になったんだね!!」


「あっ!!そうだ!!」


一恵ちゃんがまた、カバンの中から何かを取り出してきた。


「私、これやりたかったんだ~~~~。はいっ♡♡♡」


一恵ちゃんが、ポッキーをくわえて、俺の目の前まで、顔を近づいてきた。


「こ・・・・・これは・・・めちゃ恥ずかしいヤツじゃん・・・・」


「早く~~~~♡♡♡」


「わかった」


一口ずつ、お互いに食べていたが、目を開けているから・・・・すごくドキドキ。

キス以上にこれは、恥ずかしいやつだ!!!

最後の一口で、軽く唇にふれた瞬間は、照れが隠せなかった・・・・・・・


「また1つ、やりたい事が叶った♡♡♡ 直樹くんのお蔭だね♡♡♡」


沈む夕日を見ながら、二人寄り添い、俺の左手をいたわりながら、一恵ちゃんは、幸せそうだった。

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