第64話 2度目の文化祭

10月に入り、過ごしやすくなって、学生は文化祭の準備に追われていた。

3年生が、大学受験とか、就職活動で忙しくなるから、新しく部長を決めなければならない中、私が、次の美術部の部長に決まってしまっていた。

部長になったから、あの場所にも、余り行けなくなるかもと心配している。


部として文化祭は、毎年、絵画展をやっているので、そこまで問題はないのだが、

私が仕切らなければならないのが、ちょっと不安だった。


当然、直樹君を誘って、文化祭を楽しみたいから、お誘いのラインを送ってみた。

「もちろんOK」と、うれしい返信が返ってきて、部長としても、この文化祭を頑張ろうと、決意が固まっていた。



「先輩~~。文化祭って行くんですか~~?」


仕事の昼休みに、田口さんが聞いてきた。


「うん。来週なんだけど、もちろん行くよ~!」


「あぁ~~~。私の高校と日取りが同じなんですね・・・・・先輩にも、私の高校の文化祭きてほしかったのに~~・・・・・」


「ごめんね~。でも、俺なんかが行ったら、勘違いされるかもよ?

 田口さんの好きな人に」


「そ・・・・・・そうですね・・・・・・(逆にされたいよ!)」


去年の文化祭で、一恵ちゃんに告ろうとして、タイミングが合わず失敗したけど、

今年は、『彼氏』として一緒に歩けると思ったら、楽しみで仕方がなかった。



あっという間に、1週間が過ぎて、文化祭の当日となった。

一恵ちゃんは、美術部の部長らしく、しばらくは時間が作れなかったから、

哲と二月さんカップルと共に、行動をしていた。(去年と同じだ)


「横井君、一恵と上手くいってる?(ニヤッ)」


二月さんが、意味深な感じで俺に聞いてきた。


「も・・・・もちろん上手くいってるよ~!」


「そうだろうね(笑)」


何か知ってて、わざと聞いているな・・・・・そう感じられた。

しばらくブラブラと回っていたら、一恵ちゃんからラインが入り、今から一緒に回ろうとの事だった。

ニヤついていた、哲&二月のバカップルと離れて、一恵ちゃん共に、文化祭を楽しんでいた。


「部長って大変じゃない?」


「そうね~。まとめるのは大変だけど、仕方が無いよ~」


「やっぱ、出来る女は違うね~~!」


「そんなんじゃないから~(笑)。みんな面倒くさいだけなんだよ~きっと」


「確かに、面倒くさいよね~」


「だから、あの場所にも、頻繁に行けなくなるかも?と心配で・・・」


「まあ、部長がいつも居ないんじゃ、ちょっとアレだしね~」


「でも、任された以上、ちゃんとやらないとね!!」


責任感の強い所も、俺は大好きだ。

二人てをつなぎ、なんだか堂々として学校内を回っている。普通の高校生なら何とも思わない光景だろうけど、俺からしてみればすごく新鮮だった。




無事に、楽しい学園祭が終わった次の日だった。

同じ美術部員の女の子から、嫌な噂を聞かされた。


「部長、ちょっと聞いていいですか?」


「うん、なにかな?」


「なんか、部長が不良と付き合ってるって、小耳に挟んだんですが、本当ですか?」


「え?不良って・・・・・・・・」


「ちょっとした、噂になってますよ・・・・・・・」


誰かが、文化祭で、私たち二人の事を見て、そんな噂が流れ始めていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る