第57話 仕事が楽しい

働きだしてから、1カ月が過ぎようとしていた。

サービス業だから、日曜日には休みが無く、平日の休みになる。

まぁ~、日曜日に予定なんてないから、そんなに気にはしていない。


朝も、開店は10時と遅めだから、朝が弱い俺にとっては、好都合。

夜は20時閉店と遅めではあるが、特に問題はなかった。


パートのおばさんとも、それなりに上手くいっているし、バイトの田口さんとは、歳も近いから、話の話題もすごく噛み合う。

平日の夕方を過ぎると、客足も鈍くなり、田口さんと話してる事が多くなっていた。


「今日は店長、早く帰ったね~。そう言えば、田口さんに聞きたい事があるんだけど」


「なんでしょうか?」


「夏休みなのに、なんで毎日のように、バイトに来るの?」


「私、部活も入ってないし、お金もほしいし、家に居ても、どうせやる事ないですから」


「今が遊び盛りじゃん。なんか、もったいないような・・・彼氏とかいないの?」


「そんなの居ませんよ~~~!!でも、今は気になってる人は居ますけど・・・」


「へぇ~~~。同じ学校の人?」


「そんなの、言えませんよ!~~~~~」


「そうなの?」


「言えません!!そ~言えば昨日、先輩と仲良くしゃべってた人って、彼女さんなんですか?」


昨日、加藤さんが店を訪ねて来てくれた。

祭りが近いので、待ち合わせ場所とかを報告に来たのだ。


「まだ、付き合ってはいないかな」


「そ~~なんですか!!」(まだチャンスはあるのかも)


「みんなで、祭りにいくから、それの報告をしに来ただけだよ」


「ふ~~~~~ん・・・・どう見てもいい感じに見えましたけどね~~(ニコッ)」


「あ・・・・・ほら、お客さん来たよ・・・・・」


仕事も決まって、少しは落ち着いてきたから、加藤さんに告白しようと思ってはいるけど、みんなで行くから、言うタイミングが、あるのかが問題だ。

『二人で行かない?』とも言えないからな~~。


うまく、お客さんがきて、ごまかせたかと思ってたら、田口さんはさらに突っ込みを入れてきた。


「先輩!あの人の事好きなんでしょ!!!」


「え??何の話???」


「とぼけないでください!!!昨日の人の事ですよ~!!」


「まだ、友達だって!」


「まだって事は、やっぱり好きなんじゃ~~~ん!!」


「田口さん、突っ込んでくるね・・・・・・・・」


「私がいながら、その人の事が好きだなんて~~~」


「え??」


「冗談、冗談~(笑)」


明るくて楽しい田口さんと話していると、こっちまで元気が出てくる感じがした。


「田口さん、夏休みが終わっても、バイトは続けるの?」


「はい、続けますよ~~~。今みたいに、毎日って訳にはいかないけど、土、日とかは来るつもりでいます」


「がんばるね~~~」


「横井先輩も頑張ってるじゃないですか!」


「俺はもう社会人だから、当たり前だと思うけど~」


「でも、頑張りが認められて、来月からは正社員になるんでしょ?」


「そんなに褒めても、何も出ないぞ~~~~(笑)」


「え~~~~~~。ジュースくらい、おごってくださいよ~~~(笑)」


今は、仕事が楽しいと思っていた。

前の会社は、靖枝さんがいた時は、まだ良かったけど、仕事自体を楽しいと思った事はない。

今は、従業員が少ないからもあるのか、みんなで助け合いながら仕事をこなしている。

前の会社をクビになって良かった~と、珍しく、ポジティブに考えていた。


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