第54話 初めてのライン
家に着いたなり、親から、バイクが直ったと電話があったそうだ。
とにかく月曜日から、ハローワークに行かないと、いつまでも遊んでいられない。
そんな事を考えていたら、早速、加藤さんからラインが送られてきた。
「無事に帰れたかな?」
なんて優しいんだ!そんな事を思いながら、初めてラインを送ろうとしたが、
文字を打つのに、少しの時間が掛かってしまった。
慣れない事すると、疲れるな・・・・・・・・
「ちゃんと帰れました。今日は楽しかったです。ありがとう」
これだけの文章を打つのに・・・・・・・10分近く掛かった;;
加藤さんの返信は早くて、1分もしないうちに帰ってきた。
「よかった!こちらこそ、ありがとね!!」
しばらく、やり取りが続き、終わった時は、ドッと疲れてしまい、そのまま寝てしまった。何にしても、初めてって緊張するもんだ。
日曜日は、とにかく安静にして家で休み、月曜日。バイクを取りに行き、ハローワークへと足を運んだ。
なんだか、気難しい表情を、職員さんはしていた。
「横井さん、学歴は、中卒ですか~・・・・・・・・。それで、前の会社はどんな理由で辞めたのですか?」
「ちょっと、バイク事故を起こして、入院してました。それで、クビに・・・・・」
「なるほど。正直、学歴が無いと、厳しいんですよね・・・・・・・・どんな仕事が希望なんですか?
「特に希望はないです」
しばらく、職員さんは、パソコンと、にらめっこをしていた。
少しは覚悟はしていたが、学歴が無いと、当然、大企業はムリだし、中小企業もそれなりの、資格や学歴を求めている。
そんな中、職員さんは、これはどうかな?と、勧められたのは、電子部品の流れ作業の仕事だった。
「これでどうですか?」
「とにかく、早く働きたいので、これでお願いします」
「それじゃー面接受けれるように、電話しますね」
職員さんは、その会社に連絡を取って、次の日に面接は決まった。
すんなり決まってくれればいいが・・・・・どうだろうか・・・・・・
ハローワークから一旦家に帰り、加藤さんが待つ、あの場所へと向かった。
「加藤さん、今日もがんばっているね~」
「あっ!横井君。バイク直ったんだ~」
「何かと、足が無いと不便だよね。さっきハローワーク行ってきて、明日、面接なんだ」
「ああ~。一昨日ラインでも言ってたね~。ちゃんと決まるといいね(ニコッ)」
「いつまでも、遊んでいられないからね~」
「それじゃ~、この場所にも余り来れなくなるね」
「来れないときもあるかもだけど、この絵だけは完成させないとね~」
「仕上がりを、期待してます~!!」
そう言って、夕日が沈む前まで、真剣に描いていた。
「よし!下書き完成~!」
「えっ?見せて見せて~~!」
「いや、色を付けるまでは、見せられぬ!(笑)」
「え~~~~~。また~~~~~~。ケチ~~~~~~(笑)」
「それじゃ~帰ろっか~。明日、面接もあることだし」
「そうだね!!がんばってね!!それじゃ~明日も来れたら来てね~バイバイ~」
夕日が沈む頃、二人は帰っていった。
次の日の午前中に、面接を受けたが、どうも、風当たりは悪そうだった。
「どうして前の会社を辞められたんですか?」
「ちょっと、バイク事故で入院してまして・・・・・・・」
当然、履歴書にはウソはつけず、最終学歴の所は中学卒になっている。
ハローワークの職員さんは、どこまで俺の事を話しているのかは分からないが、面接担当の人は、首をかしげていた。
「わかりました。面接の結果は、明日に電話でお知らせします」
ものすごく、手応えが無いように感じられた。
でも、もし就職が決まれば、あの場所にも行けなくなるから、その日の午後に、
加藤さんに会いに行った・・・・じゃなく、絵を仕上げにいった。
「こんにちは、加藤さん」
「あっ!横井君。面接どうだった??」
「ん~~~~~。手応えは無いかな・・・・・・」
「でも、わからないよ!前向きに考えて行こう!」
「仕事が決まったら、ここには余り来れなくなるから、今日で絵を完成させる!」
「そうだよね・・・・・・寂しいけど・・・・・・」
素人ながらも、真剣に、色を塗ってはみたものの、やっぱり難しい。
大雑把な性格がここにきて、色に現れている感じがした。
「こんなもんかな・・・・・・完成~~~~!」
「えっ?早いね~~。見せてみて~~」
「素人だと、これが限界だよ」
加藤さんは、真剣に俺の絵を見ていた。
「横井君・・・・・・・これ・・・・・上手いよ!!なんて言えばいいんだろう。この大胆さが、すごくいい!!私に足りなかったのはこれかも!!」
「え??それは言い過ぎじゃ~?」
「私は、綺麗に描く事に、こだわり過ぎてたのかもしれない。この青空。大雑把で大胆に見えるけど、そこがすごくいい!!」
「そ・・・・・そうなのかな?・・・・・」
「横井君。この絵、貰ってもいいかな?」
「べつに、いいけど・・・・・・・・褒めすぎじゃない??」
「私は、すごく気に入ったんだ~~!!」
そうやって、絵を貰って、すごく嬉しそうに。、加藤さんは帰っていった。
俺には分からない感性があるんだろうか・・・・・・・
でも、喜んでくれた加藤さんを見ていると、何でも上手くいくような気がしていた。
しかし、次の日。
そんなに上手くいくはずもなく、面接は落ちて、仕事は決まらなかった。
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