第53話 柔らかい手
自転車で、待ち合わせ場所まで1時間くらいかかる。
はやる気持ちに、ブレーキを掛けられず、2時間前に家を出た。
まだ、リハビリ中で、首と左腕の痛みが残っており、休憩をはさみながら走っていたら、予定より時間が掛かり、1時間30分くらいで公園の近くまで来た。
それでも、30分前に着いたから、ゆっくり待っていようとしたら、すでに、加藤さんの姿がそこにあった。
まだ数回しか見たことはないが、加藤さんの私服は、とても可愛い。
今回は、水色のポロシャツに、白のスカート。
あまり、派手な色は見たことが無いな。そう言えば。
でも、清純そうな加藤さんのイメージ通りなのかも。青色が好きだって言ってたし。
熱い中、30分も前に待っててくれているなんて・・・・・・・・・
急いで、加藤さんの所に駆け寄っていった。
「ごめん、待った?」
「あっ!横井君!自転車だと遠かったでしょ~。身体は大丈夫??」
「リハビリも兼ねてきたから、大丈夫だよ」
「ムリして、ひどくならないでね!」
「ありがとう、加藤さんは本当にやさしいね」
「そうかな?身体の心配するのは当たり前でしょ。まだ完治してないんだから!」
「加藤さんも、熱中症に気を付けないとね。ただでさえ熱いからね~」
「大丈夫!!好きで待ってるから・・・・・・・・・・」
「それじゃ~いこっか~」
「うん!!」
この前も行った、同じショッピングモール内の携帯ショップへと、二人歩いていった。
もう、同じ機種って決まってるから、何も悩むことなく買い物できたが、店員さんの説明は相変わらず長いのと、契約書を書くのが面倒くさい。
1時間過ぎたところで、やっとお店から出られた。
「加藤さん、お腹空かない?」
「空いた~~(笑)」
「じゃー、近くのファミレスでいいかな?」
「横井君となら、どこでもいいよ~~・・・・・・・・」
そうやって、近くのファミレスに入り、注文の品が来る前に加藤さんは、俺のスマホ登録を、簡単そうにササッと終わらせていた。
「これでよし!!」
「俺・・・・・・古代人だから・・・・・ラインなんて使えるかな・・・・・・」
「古代人って(笑)。慣れれば簡単よ~~~」
「左手では、ちょっと使えないな・・・・・・・感覚が鈍くてね・・・・・・・」
「少しづつは良くなってるんでしょ?」
「そうだね、20%くらいはシビレが残ってて、これが完治するのかが不安で」
すると、加藤さんは、俺の左手を両手で包んでくれた。
「横井君も、治るって、信じて・・・・・・・・」
すごく、温かく、柔らかな手。
そう言えば、だんだん加藤さんの行動が大胆になってるような・・・・・・・
俺の気のせいかな??
「横井君、ご飯食べ終わったら、私も、買い物してもいい?」
「いいよ~。何を買うの?」
「いつもの、絵の具!!(笑)」
ご飯を食べ終え、加藤さんの目的場所に移動している時だった。
「また、光武君とゆうちゃんに、会ったりして(笑)」
「(笑)どこまで世間は狭いんだ~~(笑)」
そんな事を言ってると、見覚えのある顔が、目の前から近づいてきた。
「あれ~~~~。一恵ちゃんと横井君じゃん~~!!」
「三月ちゃん!」
今度は、吉村さんと彼氏さんだった。
「二人でショッピングか~~~。一恵ちゃんも、すみにおけないなぁ~」
「私がお願いして、誘ったの~」
「お邪魔だから、私たちは行くね。それじゃ~ね、ごゆっくり~~~~」
あいさつ程度で、吉村さんカップルは立ち去っていった。
「世の中・・・・・・・狭いね・・・・・・(笑)」
「本当に・・・・・・・狭いね・・・・・・(笑)」
二人で、笑い合った。
田舎のショッピングモールだと、そんなものかも。
行く所も決まってしまうから、出会う確率はかなり高め。
こうして、加藤さんのお目当てのお店に着き、品定めしていた。
「横井君、昨日の絵に色は塗るよね?」
「素人の俺だけど・・・・・大丈夫かな・・・・」
「大丈夫!横井君の好きな色を選んでみて~」
「わかった」
俺も、青が好きだから、青空にこだわって行こうと、濃い青と薄い水色の絵の具を選んだ。
「これと、これかな~」
「あっ!!いい色だね~~~!これは私が買うから」
「そんな・・・・悪いからいいよ~」
「私が誘ったんだから、これくらいはしないとね(ニコッ)」
そうやって、加藤さんに2種類の絵の具を買ってもらった。
俺が、自転車で帰らないといけないので、、少し早めだったけど、帰ることにした。
「加藤さん。今度の月曜日は、あの場所に居るかな?」
「うん、いるよ~」
「それじゃ~、俺も月曜に、描きにいくね~~」
「うん。待ってる・・・・・・・♡ あと、ラインもするからね~~(ニコッ)」
「ちゃ・・・・・ちゃんと返信できるかな・・・・・・」
「大丈夫だよ~(笑) それじゃ~、気を付けてね~~!!バイバイ~~~」
そうやって、俺は自転車で帰っていったが、身体は少しダルかった。
無理して再発だけは避けなければならないが、心の方は十分満たされていた。
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