第45話 リハビリ
入院して一週間がすぎ、少しは痛みが治まった所で、リハビリ担当者と、その上司が病室へと、あいさつに訪ねてきた。
「横井さん。そろそろ、リハビリに入りたいんですけど、大丈夫ですか?」
「まだ、かなり痛みはあるけど、大丈夫です」
「そうですか。では、担当者を紹介しますね。松本かな さんです」
「は・・初めまして、松本かなです。よろしくお願いします」
「あ。よろしくお願いします」
「まだ、専門学校を卒業したてで、分からないことも多いのだけど、これからの担当に決まったので、よろしくお願いします」
卒業したてって事は、20歳くらい?22歳かな?とても綺麗なお姉さんだ。
「では、明日から、リハビリを開始しますので。横井さんは午前中の10時からになりますので、よろしくお願いします」
「あ。はい、よろしくお願いします」
首の痛みと、左腕の痛みは、まだ相当なもので、やっと動かせる感じで、不安もかなりあったが、ジッとしててもヒマなだけで。
とにかく、早く退院したいから、リハビリを頑張るしかなかった。
次の日の10時に、松本さんが病室まで訪ねてきた。
「コンコン・・・・・横井さん失礼します」
「あ、はい、どうぞ」
「今日から、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
「では、案内しますね」
病院の別館へと歩いていくのだが、結構な距離で、痛みがある自分には、これもリハビリなんじゃないか?って、思うくらいの距離だった。
基本的には、お年寄りしかいない。まぁそうだろうな。
「はい、着きました。それじゃ、最初は、首周りをマッサージしますね。痛かったら、ちゃんと言ってくださいね!」
「わかりました」
まだ、痛みが残ってるため、不安していたが、松本さんは、やさしくマッサージをしてくれた。
「痛くないですか?」
「はい、大丈夫です」
「こんな事、言うのもアレなんですけど・・・・・横井さんが、担当になって初めての患者さんなんです。だから、私も不安なので、何でも言ってくださいね」
「そうなんですか・・・・・」
いくら、専門学校出てるからって、初めてだと、緊張もするだろうな。
失敗して、痛くても、俺は我慢する覚悟をしていた。
でも、そんな覚悟はいらず、本当に上手く、気持ちよかった。
俺は、松本さんに、色々と質問してみた。
「すいません。質問してもいいですか?」
「はい、いいですよ~」
「松本さんは、なんでこの仕事を選んだんですか?」
「そうですね~。自分に出来る、人の助けになる仕事につきたくて、この仕事を選びました。道のりは結構大変でしたが、やりがいのある仕事だと思ってます!」
俺とは真逆な答えだった。やりたいこともないまま、1年、我慢して働いていたが、松本さんには、ちゃんと働く理由がある。
お金のためじゃなく、人助けをしたいなんて・・・・
正直、この若さで、自分のやりたい仕事を見つけるのは、凄い事だと思う。
すると、松本さんの方からも質問してきた。
「横井さんに聞いていいですか?」
「はい」
「生年月日を見たら、16歳だから、高校生かな?」
「・・・・・・・・」
また、偏見な目で見られるかも・・・・・そう思った。
「あ~・・・・高校には行かなかったんです・・・」
「あっ。そうなんだ~。じゃ~社会人って事かな?」
「ここに来るまでは・・・そうでしたが・・・・クビになっちゃいまして・・・」
「え?ごめんなさい・・・・・変な事聞いちゃって・・・」
「いや、別にいいですよ・・・」
「じ・・じゃ~次のリハビリに行きますね」
「はい」
「左手の感覚を戻すために、粘土で何かを作ってみてください」
「左手だけですか?」
「いえ、なるべく左手を多く使ってでいいですよ~」
「わかりました」
しびれと、痛みで、まったく言うことが利かない・・・・・・・
健康第一って、まったくその通りだと思った。
「あ・・・さっきの話の続きしても大丈夫ですか?」
「いいですよ」
「じゃ~1年くらいは仕事をしていたんですか?」
「そうですね。自分は、やりたい仕事ではなかったですけどね・・・・・」
「じゃ~私より、社会人の先輩じゃないですか!」
「先輩って言うほどでもないですが・・・・・」
「いや、私の方こそ、いろいろ教えてくださいね!(ニコッ)」
「教えるなんて・・・・・」
松本さんは、俺の事を、偏見的な目で見ていなかった。
これは、単に、自分の思い過ごしなんじゃないか??と、分からなくなってきた。
1時間が経ち、リハビリも終了になり、病室に戻った。
「それじゃ~、また明日の10時に伺いますね。失礼します」
自分の思い通りに行かない左手に、すごいストレスを感じていた。
本当に、ちゃんと動くようになるのか??すごく不安な、リハビリ初日だった。
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